キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルについて

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、イギリス王チャールズ1世、2世がこよなく愛したことから、犬名に国王の名を冠したといわれる由緒正しき犬種とされています。名前が長いため、通称「キャバリア」や「キャバ」など親しみのある略称で呼ばれています。英国のみならず日本でも人気の高い犬種です。


歴史

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのルーツと言われるスパニエル系の愛玩犬は長らくイギリス王室の愛玩犬として愛されてきました。18世紀になると鼻の短い短頭種の犬が大流行した影響を受け、その愛玩犬にパグや狆などを交配して現在の「キング・チャールズ・スパニエル」が生まれました。しかし19世紀のはじめ、チャールズ2世時代の絵画に一緒に描かれていた、昔王室に愛されていた鼻が長めの犬を見たアメリカ人が、その復活を求め、当時としては莫大な懸賞金をかけました。その結果、ブリーダーたちは競ってキング・チャールズ・スパニエルから時折産まれる先祖返りした個体を元に、チャールズ2世時代の絵に近い見た目の犬を保ち、その犬を「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」と名付けました。「キャバリア」とは『中世の騎士(ナイト)』を指しています。

当時のヨーロッパ王族や貴族の肖像画にはスパニエル系の小型犬が描き込まれていることが多く、王室と犬のかかわりについては歴史上にも数々のエピソードを残しています。


特徴

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、スパニエル系の中でも小さめで、目は離れていて大きく耳が垂れさがり、頭頂は平坦の愛らしい顔立ちをしています。

また、身のこなしが優雅でのびのびとした軽やかな歩き方をしており、飼い主に忠実な犬です。絹糸のような被毛はそれほど長くはなく、少々ウェーブがかかっている場合もあります。また、足元に羽毛のような長い毛が生えているのもこの犬種の特徴です。


キャバリアの性格

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは愛嬌たっぷりの誰からも愛される、理想的な家庭犬です。明朗活発で子どもや他の犬とも仲良くでき、愛情深く従順で初対面の人に対しても人見知りすることない天真爛漫さが魅力です。しかし、その性格から分かるようにほとんど吠えたり噛んだりしないため、番犬には向きません。

また、頭がよく覚えが早い子が多いため、犬を初めて飼う人にも向いている犬種の一つです。いつも一緒にいる人の話や態度はすぐに理解できるので褒めながら色々なことを教えることができ、飼い主さんを信じようとする姿は健気でさらに愛おしさを感じさせてくれるでしょう。


英国式・毛の色の呼び方

キャバリアの毛の色は、「ブラック・タン」「ブレンハイム」「トライカラー」「ルビー」の4つに分かれます。国王の犬の多くがブラック・タンであったことから、キング・チャールズ・スパニエルとはブラック・タンのみを指しています。白地に栗色の斑があるものをブレンハイムと呼ぶのは、この色の犬の飼い主であったイギリスの名将・マールボロ公の居城の名「ブレンハイム」に由来します。黒白茶のトライカラーのものはプリンス・チャールズと呼び、赤い色はルビーと呼びました。原産国はイギリスで、キャバリアが特別愛されているのがこのことからもよくわかりますね。


なりやすい病気

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは他の犬種よりも僧帽弁閉鎖不全症という心臓疾患の発症率が特に高いことで知られています。これは心臓にある4つの部屋を仕切っている弁の一つである僧帽弁がうまく閉まらないことが原因で、心臓のポンプが正常に機能しなくなり循環障害を起こす病気です。ある報告では、キャバリアにおいては1歳ですでに33%がこの病気を持ち、4歳以上では60%もの多くの個体に発症するといわれているほど好発する病気のため、注意しなければなりません。


また、もう一つキャバリアに多い病気として、血液を固まらせる機能である血小板が少ないことが原因でさまざまな症状を引き起こす血小板減少症があります。すべてのキャバリアが血小板減少症とは限りませんが、血小板が少ないキャバリアが多く、血小板の大きさが他の犬種に比べて大きいことが関係しているようです。


僧帽弁閉鎖不全症も血小板減少症も遺伝性疾患のため、この犬種の選定にあたっては何世代かに渡って病歴をチェックすることが望まれます。

その他、目が大きいため目に関する病気やアレルギー性皮膚炎、大きく垂れ下がった耳により耳の中が蒸れやすいため外耳炎にも注意が必要です。


まとめ

華麗な容姿、愛想のいい性格、長毛種にしては手入れが簡単なことなど、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルはとても人気の高い犬種です。

しかし、なりやすい病気を考えても健康状態には注意が必要なため、飼い主さんが日頃からしっかりとチェックして、すぐに異変に気付けるようにしましょう。

ペットクリニック.com

獣医師発信のペット情報サイト