成犬に社会化をやり直させることができる?

犬が問題行動を起こしてしまう理由の多くは【恐怖】【警戒】です。知らない相手を怖がって、自分に危害を加えるかもしれないと警戒しているために、吠えたり咬みついたりするのです。

犬の問題行動を改善するために大切なのは「教える」でも「しつける」でもなく、経験して「知って」もらうということです。


犬に「知って」もらうには?

犬が何かを知る方法は、自分の体で【経験】して【納得】することです。

たとえば、犬を嫌いな人は、吠えられたり咬まれたりという【経験】をした上で、犬は恐い動物であると【納得】して嫌いになります。この感情は理屈ではないため【理解】とは違うため、頭では恐くないとわかっていても、どうしても好きになれない方が大勢いらっしゃいるのです。

犬も同じように、人が教えて理解させるのではなく、犬自身が行動を起こしたときに自分の望む効果が得られないことがわかればよいのです。

問題行動を起こす成犬は、これまでの経験で咬みついたり吠えるべきだと思い込んでいます。この【納得】を崩し、新しい【納得】をしてもらわなければならないのですから、時間も手間もかかるでしょう。飼い主さんは粘り強く【経験】させなければいけません。


【経験】と【納得】

成犬の場合、嫌いなものを好きになってもらうのはとても大変です。ですが、好きにはならなくても平気になってもらう必要はあります。「自動車は嫌いだけど前を通り過ぎるくらいなら我慢できる」「知らない人間は怖いけれど、頭をなでられるだけなら大丈夫」と考えてもらえるようになれば、問題行動は減っていきます。

人間の場合、例えば梅干しが嫌いな人が食べられるようになるには「ものすごく酸っぱい」という【納得】を「そうでもない」に訂正する、複数回の【経験】が必要です。「おいしい」とまでは訂正されなくても、ある程度の酸っぱさを予想して食べれば、「そうでもない」と訂正することができます。酸っぱさを予想することは、経験を積むことが必要です。

犬の場合、いくら吠えても反応しない自動車や、牙をむいても避けてくれない人間がいれば、自分ががんばっても【恐怖】から回避できないことを経験します。そして、いろいろとがんばるよりもじっと我慢しているほうが速く回避できることを【納得】するようになるでしょう。

実際、自宅では爪切りできないのに、病院の診察台に乗せるとできる子が多くいます。

これは、家では爪を切る際に吠えたり牙をむいたりすると飼い主さんはあきらめてしまうのに対し、獣医師や動物看護師は、咬まれても暴れられても途中でやめることがないからです。「もがいたり吠えたり逃げたりしたけれど結局やられた」という経験をした犬は、「あの台の上ではどう抵抗しても無駄」と【納得】したのです。

ちなみに、猫が台の上で動かなくなってしまうのは、諦めではなく警戒です。

犬は危険を感じると回避するための行動に出ますが、猫はひとまず動かずに状況を考える動物なのです。このような習性の違いがあるため、上記の方法は猫には犬ほど効果がありません。


頼れる飼い主(リーダー)になる

犬は群れで生活する生き物なので、自分より上位の個体の命令はどんなに理不尽でも遂行します。そのため、吠えなければいけない相手でも、咬みついたほうがよいと感じても、リーダーが駄目といえば駄目なのです。

お父さんがいれば吠えないけれど、お母さんだけだと吠える場合には、犬はお父さんを自分より上、お母さんを下だと格付けしていることになります。

普段の行動を見直してみて、犬がリーダーと認める存在になれるよう心掛けてみましょう。


何歳からでも社会化はできる

人間も、熟年や老年になってから習い事を始めることはできます。若い人や何年も続けている人にはかなわないかもしれませんが、それでもやっていない人たちよりは上手にできるようになります。

犬は人間よりも集中力があります。時間もたっぷりあります。ですので、飼い主さんが辛抱強く続ければ、きっとできるようになってくれるでしょう。

遅すぎることは決してありません。時間をかけて楽しく【納得】できる【経験】をさせてあげることで、飼い主さんも、そして犬自身も、今よりもストレスの少ない生活を送ることができるのではないでしょうか。