愛犬に「待て」を教えよう

犬が人と一緒に社会で安全に暮らしていくために必要なしつけがいくつかあります。その中でも、人の言葉に従って動作を中断するしつけである「待て」は動作を教えるしつけの中でも特に重要です。

今回は「待て」の教え方とその応用法について、お話していきます。


しつけをする前に

犬に対する“しつけ”とは、人に迷惑をかけず誰からも愛されるように育てるために、人のルールを教え、犬を導くことです。

“しつけ”と聞くと「犬を叩いたり怒ったりするイメージがあるから、かわいそうでしたくない!」という方がいらっしゃいます。しかし、犬はもともと家族という群れの中でリーダーの言うことには喜んで従う習性があります。そのため、どんなしつけでも、まずは飼い主さんが犬にとってのリーダーになっているということが非常に重要であり、きちんとリーダーになっていればしつけは簡単に行うことができます。


しつけをするときにしてはいけないこと

犬に尊敬されるリーダーとして、決してしてはいけないことがいくつかあります。

まずは、体罰を行ってはいけません。体をたたいたり突き飛ばしたりすると、人に対して恐怖心を抱かせてしまうだけで逆効果です。

次に、いつまでもしつこく叱ることもよくありません。長い時間叱ってしまうと、犬は何に対して叱られているのか理解できなくなってしまいます。わけもわからず不機嫌な人を犬は尊敬できないため、叱るときには犬がしてはいけないことをした直後に、すぐに分かるように伝えましょう。

さらによくありがちなのが、いろいろな言葉で教えるということです。ある時は「待て」と言い、またあるときは「待って」「止まって」「動かないで」などと、いろいろな言い方をされてしまうと犬は戸惑ってしまい、いつまでも「待て」という言葉を覚えることができません。リーダーとして、常に分かりやすい指示を出すことが大切です。家族みんながしつけに関わる際にも、使用する言葉は統一しておきましょう。


待てを教えるシーン

待てという言葉は、犬が行おうとした動作を中断させるものです。歩みを止める、食べる動作を止める、飛びつくのを止めさせるなど、様々なシーンで使われるため「待て=動作の中断である」と教えておくと、様々な状況で活用することができます。


基本の待て

まず犬を座らせます。この時に、できれば伏せをさせるとよいでしょう。そして「待て」と指示を出します。少しの間、犬がそのままの体勢でいることができたらよしといって待てを解除した後、よくほめます。待てができたときだけよくほめ、そうでないときはちょっとがっかりして決してほめません。このとき、怒る必要はありません。あくまでも「じっとしていてくれたら私はとても嬉しい」ということを強調して伝えましょう。

「待て」という言葉を理解してきたら、少しずつ待たせる時間を伸ばしていきましょう。また同時に徐々に犬から離れていくようにして、犬が飼い主さんと離れた状態で一人でも我慢ができるようにしましょう。これらの行動を、まずはできるところから始め、できたら常にほめることがとても大切です。


お散歩での待て

お散歩中はリードを利用して教えます。犬と歩いている時に「待て」と言いながら突然立ち止まります。はじめは犬は何のことだか分からないので、先に進もうとしてリードをぐいぐい引っ張るかもしれません。しかし、それでも人がじっとしていたら、引っ張るのを止めてふっと立ち止まるときがあります。その瞬間を逃さずに、すぐによくほめます。この行動を何度も繰り返すうちに「待てと言われて立ち止まるとほめてもらえる」ということを理解するようになります。


食事前の待て

食事の前にすでに「待て」を行っている方は多くいらっしゃるかもしれません。犬にとって、食事はそれ自体がごほうびなので、比較的覚えてもらいやすい方法です。はじめは犬と食事の間に手のひらをかざして、勝手に食べられないようにガードする必要があるかもしれませんが、その後すぐによしと言ってご飯を食べさせるようにすれば、少し待てば必ずご飯(=ごほうび)が食べられるということを理解し、だんだん時間を長くしても待てができるようになります。


待てを教えるとこんなこともできるように

「待て」を教えることで、さまざまな問題を解決できるようになります。例えば、お散歩中に勝手にぐいぐいと先に行きそうになっても「待て」の一言があれば、リードを引っ張るのをやめさせることができます。また、ほかの犬に対する興奮を抑えたり、食べ物が落ちていて、それを拾い食いするのを事前にストップさせるときにも使うことができます。

また、突然の来客に興奮して飛びついたり、うれションをしてしまう子の場合も、そのたびに「待て」とそのあとに「お座り」をさせることによって、徐々に過度な興奮を抑えることができるようになります。


まとめ

集合住宅の敷地内やドッグラン、ドッグカフェなど、以前に比べて犬の行動範囲が広くなり、たくさんの人やほかの犬と接する機会が増えてきました。そのようなときに基本的なしつけができていないと、さまざまなトラブルを引き起こしてしまうことがあります。

犬と人がお互いに安全で快適に暮らすためには、基本的なしつけという社会のルールを教えることが必要とされているのです。