人工呼吸 ~おうちでできる応急処置~

応急処置が必要な緊急事態はある日突然やってきます。もしも愛するペットが何らかの原因で倒れてしまい、息をしていないなんて事態に遭遇したら、一刻も早く人工呼吸を行う必要があるかもしれません。

今回は、そのような緊急事態に遭遇した時に飼い主さんができる応急処置についてご紹介します。


呼吸が止まる緊急事態

たとえば、愛犬が犬用のガムやおやつを大きなかたまりのまま飲み込んでしまった場合、それがのどに詰まって窒息してしまうことがあります。もしも詰まったものをのどから取り出すことに成功しても、その時点ですでに呼吸が止まってしまっていたら、すぐに人工呼吸をはじめる必要があります。

また、お風呂場の蓋の上で寝ていた愛猫が足を滑らせてバスタブに落ちてしまい溺れてしまった場合、すぐに水を吐かせることができたとしても、やはり呼吸が止まってしまっていたら一刻も早く人工呼吸を行わなくてはなりません。

そのほかにも、てんかん発作や心臓病などの持病によってや、火事に巻き込まれて煙を吸ってしまった場合や感電してしまった場合といった突然の事故などで、急に意識を失うような事態に陥ってしまったら、まずはすぐに呼吸をしているかどうかを確認し、止まっているようであればすぐに人工呼吸を始めるようにしましょう。

【呼吸の確認】

ペットを平らな場所で横向きに寝かせます。その状態で胸の部分を見てみましょう。呼吸をしていれば胸が規則正しく上下に動くはずです。胸が動いていなければ呼吸をしていないことになります。呼吸が弱く、分かりにくい場合には鼻の前にティッシュや毛糸など軽いものを垂らして揺れるかどうかで呼吸をしているかどうかが判断できます。

【人工呼吸法】

  • ペットを平らなところで右側が下になるように寝かせます。
  • 横向きに寝かせたまま、首をまっすぐ前に伸ばしてのどに空気が通りやすい状態にします。
  • 口を開けて中を確認しましょう。もし、のどを塞いでいるもの(吐いたものや唾液の泡など)があればすべて取り除きましょう。唾液の泡は指にガーゼを巻いてぬぐうとよいでしょう。
  • 息が漏れないように手でペットの口を閉じ、鼻に口を当てます。1秒間、鼻からゆっくりと強く息を吹き込みます。このときに胸が軽く膨らむのを確認しながら行ってください。
  • 鼻の長いペットの場合は口元から息が漏れることがあるので、両手でしっかりと口のわきを塞ぐようにしましょう。
  • 体格の小さなペットの場合は、息を多く吹き込み過ぎないように注意しましょう。胸の大きさを見て、大きく膨らみ過ぎないように確認しながら行いましょう。
  • 上記を数回行い、ペットが自ら呼吸をするかどうか確認します。
  • 自力で呼吸をしない場合は、再び同じことを繰り返します。
  • もしも、呼吸と一緒に心臓も止まっている場合には心臓マッサージと組み合わせて人工呼吸を行います。心臓マッサージを30回行ったら人工呼吸を2回行い、心臓の動きがあるかどうかを胸を触って確認します。心臓が動き出さないようであれば、心臓マッサージと人工呼吸のセットを繰り返します。


動物病院に連れて行くときは

  • まずは、すぐに動物病院へ連絡しましょう。「ペットがどのような状況なのか」「いつから呼吸が止まっているのか」「どのくらいで動物病院へ到着するのか」などを素早く正確に伝えておくことで、動物病院のスタッフが事前に受け入れの準備をしておけるため、到着した際に最短で処置を受けることができます。
  • 動物病院に連絡をしている人とは別の人が、すぐに人工呼吸を開始しましょう。
  • 呼吸が戻らない時には人工呼吸を行いながら動物病院に連れて行きましょう。

呼吸が止まってしまうと全身はあっという間に低酸素状態となり、特に脳は呼吸が止まってから5分前後で働きが低下してしまい(脳死状態)、死亡する確率が高まってしまいます。

また、ペットを移動させる際には頭を上にして縦に抱っこをしないようにしましょう。縦に抱いていると、もしも口の中に取り切れていなかったもの(吐いたものや唾液など)が入っていた場合に誤嚥の原因となってしまうため、横に寝かせた状態で移動するようにしましょう。


まとめ

人工呼吸の開始は早ければ早いほど生存率が上がります。そのため、もしもの時には飼い主さんが人工呼吸法を知っているかいないかが生死の境目になることもあるのです。このように、愛犬や愛猫が人工呼吸や心臓マッサージを必要とする事態に陥ってしまった場合に、どんな状況でもなるべく落ち着いて最善の行動が取れるようにやり方を頭に入れておくとよいでしょう。

大切な家族の命を救うためには、飼い主さんの判断と行動がとても重要だということを、日頃よりよく理解しておく必要がありますね。

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