マルチーズについて

日本での犬の飼い方は、1970年代に番犬から愛玩犬へと飼育環境が大きく変化し、マルチーズはその火付け役でした。純白の絹糸のような細く流れる毛に真っ黒な瞳、抱っこしてどこへでも連れて行ける大きさと、あまり広くない室内でも飼うことのできる性格は、まさに日本人のために作られた犬種のようです。しかし、このマルチーズ、原産が実は地中海のイタリア近くであることをご存知でしょうか?

今回は、昔から人気のあるマルチーズについてお話していきます。


歴史

マルチーズの歴史はさまざまな犬種のなかでもとりわけ古く、3000年以上前までさかのぼることができます。もともとは地中海で貿易を営んでいたフェニキア人の船員達が、船の上でペットとして飼っていた小型犬がマルタ島に持ち込まれ、改良された品種とされています。多くの犬種がなんらかの仕事をさせる目的で改良されていったのに対して、マルチーズは最初から愛玩用の犬として扱われてきたため「犬の貴族」と称されてきました。現に紀元前から絵に描かれ、人に愛されてきた記録が数多く残っています。

1813年にマルタ島がイギリス領になると、マルチーズはイギリスに持ち込まれ、上流階級の貴婦人達の抱き犬として大人気となりました。特にビクトリア女王は「白い宝石」と呼んで寵愛したといわれています。

アメリカには、1877年にライオンのたてがみのようにトリミングをしたマルチーズが「マルチーズ・ライオンドッグ」として紹介され、その後1888年にケンネルクラブ(AKC)に認定されました。


特徴

マルチーズの特徴はその美しい毛並みでしょう。下毛のない純白のシングルコートはなめらかで、どこまでも伸びつづけます。生え替わりがないため、抜け毛がほとんどなく、体臭もほとんどありません。以前は有色のマルチーズもいたようですが、現在は純白が基本で、時折耳に少し薄茶色が入る程度です。背中にくるりと乗ったしっぽにも純白で豊かな飾り毛が伸びています。

毛の白に対してアイライン、鼻、唇、パッドは真っ黒であるのが理想ですが、最近はやや色素不足のマルチーズもいるようです。

体重は3kg弱、足はやや短く少し胴長な外観です。


被毛に関して

マルチーズの毛はシルキーコートと呼ばれ、その細く長い毛はもつれやすく、ブラッシングが欠かせないため、お手入れには少し時間が必要かもしれません。

トリミングの頻度は、月に1回程度が目安です。毛が伸びてくると、毛玉もできてしまうので定期的なトリミングは必須となってきます。

特に冬場になると、静電気が起きやすい時期で毛玉になりやすく、さらに洋服を着せると気付きにくくなるため毛玉のできやすい脇の下や耳の下の毛は、こまめにみてあげましょう。


性格

貴族の抱き犬というとおっとりとした性格だと思われがちですが、マルチーズは意外とアクティブな犬種です。その気性からマルチーズ・テリアと呼ばれる時代があったほどです。遊ぶことが大好きで、活発に走り回ったりと、とても好奇心旺盛な犬種です。勇気もありますが、飼い主さんと知らない人を区別することが多く、場合によっては吠えたり噛もうとしたりすることもあるため、子犬の頃に基本的なしつけはきちんと行っておいたほうがよいでしょう。


気をつけたい病気

そのほかにマルチーズによく見られる病気としては、以下があります。

・膝蓋骨脱臼:うしろ足の膝のお皿の骨が脱臼しやすい。慢性化すると足の骨自体が変形してきてしまうことがある。

・気管虚脱:気管が狭くなるために、呼吸が苦しくなる。特に運動後や興奮後に呼吸困難になりやすい。

・外耳炎:垂れ耳なので耳道が蒸れやすく、細菌や真菌の感染をおこしやすい。

・免疫介在性血液疾患:自らの抗体が自分の血液成分を攻撃してしまう病気のことで、赤血球を攻撃して貧血になってしまう免疫介在性溶血性貧血や、血小板を攻撃して出血が止まりにくくなってしまう免疫介在性血小板減少症が知られている。

また、多くの飼い主さんを悩ませるのが、涙やけです。涙やけとは、目頭から鼻にかけて白い毛が赤茶色に変色してしまうことですが、これは涙に含まれている成分のせいで毛が着色してしまう現象で、マルチーズにはよく見られます。本来余分な涙は鼻涙管という目から鼻に抜ける管を通って鼻腔内に排出されるのですが、この管が詰まっていたり、涙の出る量が多いときに涙やけになります。マルチーズは毛が白いので特に目立ち、またこの部分の毛が常に涙で濡れていると皮膚炎の原因にもなるため、目の周りは毎日コットンなどで拭き取るお手入れが必要です。


まとめ

約30年前に大ブームになったマルチーズも、現在は人気犬種の10位から20位の間を行ったり来たりしています。また、最近ではマルチーズとトイプードルの良いとこどりをしたミックス犬「マルプー」が流行っています。

これからマルチーズ、マルプーの飼育を考えている方は、今回説明した性格や特徴を参考にしてみてください。

ペットクリニック.com

獣医師発信のペット情報サイト