牧畜犬・牧羊犬ってどんな犬?

ハーディング・ドッグ(牧畜犬・牧羊犬)について

犬の品種は、その姿や作られた目的によっていくつかのグループに分類することができますが、そのグループの1つに、ハーディング・ドッグ・グループというものがあります。これは羊や牛といった家畜の番犬として作られた犬たちのグループのことで、日本語では牧畜犬や牧羊犬と訳されています。

今回は、人と共に家畜の世話をしてきたハーディング・ドッグについてのお話をします。


仕事内容

人が牛やヤギ、羊などの家畜を飼うようになったのとほぼ同時期に、犬もその手伝いをするようになったといわれています。具体的にはオオカミなどの外敵から守ったり、家畜を畜舎から放牧地へ連れて行き、放牧地に散らばっている家畜を集めてまた畜舎へ誘導する仕事を手伝っていました。家畜は犬などの肉食獣に脅されると一箇所に集まる性質があり、それを利用して人が犬に指示を出して家畜をまとめて望む場所に連れて行くのです。ベテランの犬であれば、一頭で50頭あまりの家畜をコントロールすることができるといわれています。


特徴

このような仕事をさせるために、人はより優れた犬同士をかけ合せてさまざまな品種を作ってきました。ハーディング・ドッグに適した犬は、まず山野を駆け回るための運動能力と、体の大きな家畜や敵と対抗するための体格が必要です。また、人の指示に従って正しく行動することのできる知力に加えて、番犬としてテリトリーと家族を守る意識の強い性格も求められます。

ハーディング・ドッグに比較的白っぽい毛色の犬が多いのは、夜間でも見やすいためと、遠くからでもオオカミと区別するためといわれています。


ハーディング・ドッグの種類

牧畜を行っている世界各地でハーディング・ドッグは作られてきました。その歴史は古く、中には起源がはっきりしないものもありますが、ある国で作られた品種がほかの国へ渡ってさらに違う品種に作り変えられることもありました。

次に代表的な品種をいくつか紹介します。

  • コリー

コリーはもともとイギリスのシェットランド地方にいる古くからの牧羊犬です。日本ではラフ・コリーという長毛種が一般的ですが、スムース・コリーという短毛種も存在します。大型犬に属し、細長い鼻と半分垂れた耳が特徴です。日本ではかつて、「名犬ラッシー」というアニメで、賢く飼い主に忠実な犬として一躍有名となりました。コリーの近縁としてはシェットランド・シープドッグやボーダー・コリーなどがいます。

  • ウェルシュ・コーギー

ウェルシュ・コーギーは、イギリスのウェールズ地方で3000年以上の歴史を持つ古い犬種です。牛を追うために作られ、牛に蹴られないように体高が低く作られたといわれています。体は比較的小さいですが、牛のかかとに噛みついて方向転換をさせるという特技があり、限られた牧草地で自分の家以外の牛が入り込もうとしたときには、この特技を使って追い払っていたそうです。ウェルシュ・コーギーにはしっぽのないペンブロークと、それよりも一回り大きく活動的なカーディガンの2種類が存在します。

  • ジャーマン・シェパード・ドッグ

警察犬や盲導犬などでおなじみのジャーマン・シェパード・ドッグも、もともとはドイツに古くからいる牧畜犬です。その知能と運動能力の高さ、忠誠心からドイツ陸軍が軍用犬として使うようになり、近年ではさまざまな作業を行うようになりました。やや長い胴体と低い腰、太い尾、ピンと立った大きな耳を持っています。ベルギーのベルジアン・タービュレンやベルジアン・マリノアなども、シェパードによく似た形態をしている牧畜犬ですが、体格はやや小さめです。

  • オーストラリアン・キャトル・ドッグ

オーストラリアという広大な大地で牛の群れを統制するために、ヨーロッパの牧畜犬とオーストラリアの野生犬ディンゴをかけ合せて作られました。暑い気候の中、長期間牛を制御しながら移動を続けることのできる体力と忍耐力を持ち、吠えることなく牛の群れを操ることができる知力を持っています。


まとめ

ハーディング・ドッグに分類される犬たちは、もともと家畜相手に一日中屋外でハードな仕事をするように作られました。そのため、ペットとして飼う場合でもかなりの量の運動をさせることが必要となります。また、非常に賢いため頭を使う知的おもちゃであったり、トレーニングをすることで芸の幅が広がりより愛犬との楽しい時間を過ごすことができます。

ただし、飼い主さんに危険を知らせる仕事も行っていたため、家族以外の人に対して警戒心が強く、吠え声も大きい子が多いので、日頃のしつけはきちんとしなければなりません。賢い犬のため、人の言うことはすぐに理解しますが、精神的な刺激や運動量が足りないとストレスが溜まりやすい性格でもあります。

ここにあげられた犬種の飼育を検討している場合は、定期的な運動が必要であることと、性格をよく理解しておきましょう。