犬のことにあまり興味がなく、ラブラドール・レトリーバーがどんな犬か分からないという方でも、「盲導犬や介助犬に使われるベージュ色の大型犬」といえば、すぐにその姿を思い浮かべることができるのではないでしょうか。包容力のある大きな体に優しく賢そうな目をしたラブラドール・レトリーバーは大変人気があり、現在世界中で最も多く飼われている犬種と言われています。
今回はそんなラブラドール・レトリーバーという犬種についてお話します。
ラブラドール・レトリーバーの歴史
ラブラドール・レトリーバーはもともとイギリスからカナダの東海岸ニューファンドランド島に連れて行かれた犬が元になっていると言われています。主に漁師に飼われており、魚を捕る網を人と一緒に引いたり、網から落ちた魚を拾ったり、海中の浮(うき)を泳いで取ってきたりする仕事をしていました。それが再びイギリスに戻され、性格が素直で泳ぎが得意なことに加え嗅覚も優れていることから、銃で水辺に撃ち落とされた水鳥を回収する猟犬としてさらに改良を加えて今の犬種がつくられたのです。『ニューファンドランド』という犬種は既に存在していたため、ニューファンドランド島の隣にあるラブラドール半島と英語で回収するを意味するretriever(レトリーバー)を合わせて名付けられ、20世紀始めにイギリスのケンネルクラブで新犬種として認定されました。
ラブラドール・レトリーバーの特徴
この犬種の外見上の特徴は、寒い海の中で力仕事をする目的からきています。広い胸幅や腰幅、がっしりとした胴や手足、力強い顎、カワウソに似た太いしっぽを持ち、スタミナと集中力があります。毛もとても密で、水をはじく上毛と冷気を通さない厚い下毛からできています。
性格はとても従順で、人のために働くことを苦にしないため、現在では警察犬、麻薬犬、介助犬、盲導犬、聴導犬、災害救助犬など、さまざまな作業犬として使われています。ただ、誰に対しても友好的な性格から番犬にはならないと言われています。
色は黒、イエロー(ベージュ)、チョコレート(こげ茶)がありますが、日本ではイエローの子が盲導犬などでいちばんよく見られるのではないでしょうか。
ラブラドールの性格
【実は問題行動も多い犬種。その原因は…】
ラブラドール・レトリーバーは盲導犬などで使われている一方、実は問題を抱えた家庭犬としてもよく話題になります。元気いっぱいでお散歩の時に全然言うことを聞いてくれない、何でも口にして飲み込んでしまう、大きな体で飛びかかってくる、などの悩みが多いようです。これは「ラブラドールは大人しく賢い犬である」という情報から、きちんとしつけをしなかった場合に起こる問題です。
大人しくて賢いラブラドール・レトリーバーは飼い主さんの長年にわたる愛情と訓練があって初めて作られるものです。ラブラドールを始めとする大型犬は、精神的に大人になるまで約3年かかります。いくら友好的な犬種といっても、その間にしてはいけないことや正しいマナーを教え、正しい運動で肉体的にも発散させていかなければただの落ち着きのない乱暴者の犬になってしまいます。人に喜ばれることが好きな犬種だからこそ、どうすれば喜ばれるのかをきちんと教えていく必要があることを忘れてはいけません。
【レトリーバーとしての本能】
ラブラドール・レトリーバーの「落ちているものを拾いたい!くわえたい!運びたい!」という欲求は半ば本能です。これを上手に利用すれば、元来の目的である獲物を回収する猟犬としてだけでなく、フリスビーキャッチやフライボール競技(4つの障害を飛び越して、箱から飛び出すボールをくわえて戻ってくる競技)なども飼い主さんと一緒に楽しむことができるようになるでしょう。
しかし、何もしつけをせずにそのままにしておくと、靴やスリッパなどをくわえておもちゃにしてしまう困った癖がついてしまったり、お散歩中に落ちている物を拾い食いするようになってしまうこともあります。
【泳ぎ好きな本能】
もともとが海で作業をするための犬なため、水は大好きです。中にはお散歩中に公園の池や小川などに飛び込んで行ってしまったり、雨の日になるとテンションが上がってわざとぬかるみで泥遊びをするような子もいるようです。でもお風呂にも嫌がらずに入ってくれるので、すぐにきれいにしてあげることができるのはありがたいですね。一緒に渓流や海などに連れて行きたくなる、アウトドア派向けの犬種と言えます。
【気をつけておきたい遺伝病】
人気犬種であるがゆえに、好ましくない繁殖を行うことによって、遺伝による先天性疾患が広まってしまうことがあります。ラブラドール・レトリーバーの場合、最もよく知られているのが「股関節形成不全症」と呼ばれる骨の病気です。これは股関節(骨盤とふとももの骨の間の関節)の形に生まれつき異常があるため、腰に痛みが出たり、うまく歩けなくなる病気です。そのほかにも肘関節形成不全症や進行性網膜萎縮症などの遺伝病も知られています。これらの病気が出た血統は繁殖として用いないというルールを徹底する必要があります。
おわりに
ラブラドール・レトリーバーほどさまざまな状況に対して適応性があり、人に対して献身的な犬はいないでしょう。大型犬ですから、きちんとした訓練にはたくさんの時間と体力、忍耐力が必要であり、生涯にわたる病気予防や食事管理などの正しい飼育管理にはある程度の金銭も必要となります。しかし、家族として迎え入れ一緒の時間を過ごせば、誰もが魅了されてしまうでしょう。大変なことは分かっている、でも一緒にいたい、そう思わせる犬種だと思います。
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