犬の芸<トリック>に挑戦してみよう!

テレビやSNSなどでよく話題になる芸達者の犬たち。
おもちゃの車を押して歩いたり、「バーン!」と撃つフリをするとコテン、と倒れたり、飼い主さんと両手でハイタッチをしたり…と、さまざまな芸をしてとってもかわいいですよね。このように通常の生活ではしないような一発芸的な犬の行動のことを「トリック」といいます。今回はこの「トリック」についてお話します。


トリックは特別なしつけ?

トリックというと「賢い犬や芸を教えるのが好きな飼い主がすることで、披露する場のない犬や普通に生活する犬には必要がないのでは?」と思われる方もいらっしゃると思います。
確かに、「トリック=芸」と考えるとワンちゃんが暮らしていくための必要最低限のしつけとは少し異なるかもしれません。しかし、トリックは「アイコンタクト」や「待て」などのどの犬にも必要な基本的動作からほんの少し発達させただけのもので、特別な知能やたくさんの練習量は必要ありません。なによりも飼い主さんと信頼関係がちゃんと築かれていないとできないものです。トリックを教えることによって犬は知的能力を向上させ、新しいことを学習して誉められることで、より飼い主さんと一緒にいることを楽しむようになるでしょう。

トリックは犬と飼い主さんの結びつきを深める、誰にでもチャレンジする価値のあるトレーニングの一つなのです。


トリックを教える時に大切なこと

トリックで最も大切なことは「人も犬も楽しむ」ということです。
芸をさせようとすることだけを考えてしまうと「これができるようになるまで頑張って!」と人だけ焦ってしまいます。そしてもし犬の興味がトリックに向いていなかったら、いつまでたってもできるようにならないばかりか、人と犬との関係も悪いものになってしまいます。トリックはあくまでも人が犬と楽しみ、そして犬自身も「この人といろいろなことをすると楽しいな。この人に喜んでほしいな。どうすると喜んでくれるのかな?」と考えて、自ら進んで新しいことにチャレンジしようとすることが大切です。


最初に覚えたいトリック「ハイタッチ」

後ろ足で立って、両前足で人の手のひらにぽんっ!とタッチするトリックを「ハイタッチ」といいます。何か嬉しいことがあったときにワンちゃんと「やったー、ハイタッチ! 」と喜びを分かち合えたらすごく楽しいと思いませんか?ハイタッチは「お座り」と「お手」ができる子であれば、そんなに難しいトリックではありません。

【ハイタッチの教え方】

①まず普通に「お手」をさせます。できたらよく褒めましょう。

②次に犬の肩よりも高い位置に手を差し出し、再び「お手」と言ってみます。
 もし一生懸命前足を上に上げてできたらまたよく褒めます。

③今度は犬の頭より高いところに手を差し出して「お手」と言ってみましょう。
始めは戸惑うかもしれませんが、「お手」を理解している子なら、後ろ足で立ち上がってお手をしようとするでしょう。もしできたら、大げさなくらいによく褒めてあげてください。これができたら、もう簡単です。

④後ろ足で立ち上がってお手をしようとした瞬間に「ハイタッチ」と言いながらあなたの手の平をワンちゃんのほうに向けて差し出し、タッチします。


その他のトリック

【あご】
「お手」の顔版です。手のひらを犬のあごにつけ、その状態のまま「あご」などのコマンドを言いながらおやつを与えます。お手を理解している子ならすぐに覚えてくれると思いますよ。

【ロールオーバー】
伏せの状態からごろんとお腹を見せ、一回転して元に戻ることをいいます。
おやつを使って、頭の位置を背中側に誘導することによって伏せから横倒しの体勢にし、そこからさらに反対側の横向きに誘導しながら教えていきます。嬉しくなるとすぐにお腹を見せてしまう子は比較的簡単にできるようになるかもしれません。

【鼻タッチ】
手のひらに鼻をつけるトリックです。ワンちゃんは興味を持ったものの匂いを嗅ごうとする本能があるため、目の前で手のひらをヒラヒラとさせると自発的に鼻タッチをする場合があります。そのときにすかさず「タッチ」といい、よく褒めます。もし、手のひらに興味を持ってくれなければ、始めのうちはおやつを指の間に挟んで誘導してもいいでしょう。


トリックを教える際の注意点

【コマンドはわかりやすく】
例えば「おすわり」「おかわり」「おまわり」など似たようなコマンドにしてしまうと犬が混乱してしまいます。おかわりは「シット」や「座れ」、おまわりは「くるん」や「ごろん」など、はっきり区別できるコマンドにしましょう。

【ご褒美の量】

教える時に何度もおやつをあげてしまうとカロリーオーバーになってしまいます。
普段おやつの時間があるようならおやつ前に練習したり、おやつを与える習慣がない場合は1日に与えるフードから少しずつとってご褒美に使うなど、工夫をしましょう。

【怪我】
ジャンプや立ち姿勢をキープするようなコマンドはコーギーやダックスのような胴長犬種やひざ関節の弱い子には怪我の元になってしまいますので注意してください。


おわりに

動物に芸を教えるのは人のエゴなのでは、と思われる方もたくさんいらっしゃると思います。確かに、叱って無理矢理辛い動きをさせるような芸はするべきではありません。しかし犬と人が一緒に楽しむ運動と考えたら、トリックはしつけの延長上にあるコミュニケーションの一つと考えられるのではないでしょうか。

トリックは難しいトリックに挑戦すればするほど、飼い主として分かりやすい指示を出しているか、愛犬の気持ちを理解しているか、など飼い主としてのリーダーシップを確認・向上させることにも非常に役に立つことに気がつくでしょう。

トリックを習得する時間が、愛犬との絆を深める楽しく幸せな時間になるといいですね!