犬が自分のうんちを食べてしまうのはなぜ?(食糞の理由と解決法)

犬は自分のうんちを食べることがあるのをご存知ですか?

人間の感覚だととても考えられないことなので、驚いたり嫌な気持ちになるのは当然です。成長と共に直ることが多いですが、そもそもなぜ食糞するのか、またその対策についてお話します。


そもそもなぜ食糞をするの?

自分のうんちを食べることを食糞症(食糞)と呼びますが、残念ながら食糞症の生理的意義については現在のところはっきりとは分かっていません。
食糞症には自分自身の糞を食べる場合と、草食動物の糞など他の動物の糞を食べる場合があります。文化の違う犬と人間が共存する以上、食糞は問題行動として取り上げられますが、健康な動物のうんちを食べることは犬にとって医学上大きな問題となることはありません。

しかし、寄生虫に感染した動物のうんちを食べてしまったり、排泄物から感染する病気もあるため、また人間と一緒に暮らす以上は衛生的にも食糞は直していきたいですね。

一般的に仔犬が糞を食べることは自然の現象です。しかし成犬が糞を食べる理由を理解することは非常に難しいです。実は人間でも強迫神経障害など精神的な病気の症状として食糞することがありますが、犬でも同様の可能性があると言われています。


食糞する原因に関するいくつかの仮説

子犬の場合は周囲の「環境調査」をする習性の影響が強いと考えられます。
人間が物を触って感触を確かめるように、彼らは口を使って物を認識しようとする傾向があります。つまり落ちている糞を「テイスティング」して情報収集しているのです。「テイスティング」した対象が、人間の感覚では理解し難い「うんち」であるだけで、犬科動物の習性から判断すると食糞は自然な現象です。

実際、狼は草食動物である牛などの糞を摂取して不足しがちな栄養成分を補完していたのです。本来、母犬は子犬の肛門を舐めることにより排便を促し、また、巣を清潔に保つため、あるいは捕食動物からの攻撃を防ぐため臭いを消すために排泄物を食べます。子犬は母親から教わった行動を学習し食糞するようになりますが、多くは離乳するころには止まります。

またフードや栄養状態が悪いから食糞するのではないかという仮説もありますが、理想的な食事を与えている犬でも食糞行為をしたということが動物行動学の研究でわかったため、現時点でこの仮説は支持されていません。

そのほかよく言われる仮説は下記のとおりです。

●うんちを食べると飼い主が騒ぐので、嬉しくて(気を引くために)食べるのではないかという説

●1つの集団で立場の優位な犬の糞を食べることは、服従的行為となるからという説

●1日1~2回の食餌で食べ足らず、空腹のため糞を食べているのではないかという説

●ビタミン(K,B)の不足を補うための「リサイクル」説


食糞行為の対策は?

先述のとおり食糞の原因が分かっていないため、対策もはっきりと「これが解決策!」という者はありません。
成長と共に食糞しなくなることが多いですが、補助的にトライしてみる価値のある対策をいくつかご紹介します。

一番有効な対策は、やはり素早く糞を処理し犬が食糞する機会をなくすことです。一番有効ではあるものの、飼い主が外出して犬がひとりで留守番しているような場合は対応できないという問題があります。また食糞した直後にすぐしかったとしても、「うんちを食べるとかまってもらえた」と考えてしまい、食糞を助長する可能性があります。
一般的に「罪」と「罰」が一致していれば問題ありませんが「うんちを食べた罰」と犬に理解させることは困難です。ですから例え食糞場面に遭遇しても、叱るよりも何も言わずうんちを手早く処理するほうが効果的と言えます。

お留守番をさせている間に食糞してしまうことが多い場合は、以下の対策を試してみてください。

①うんちの臭いや状態を変化させてみる
かぼちゃなど高繊維質で消化性の高い食事に変更したり、異なるタンパク源のフードに変更すると効果がある場合があります。

②ご飯の時間をずらす
留守にする前にうんちをしてくれるようにご飯を与える時間を変えてみましょう。時間によっては自動給餌器を活用すると便利です。

③退屈しないように長く遊べるおもちゃを与える
退屈が理由で食糞してしまっている場合、長く遊べるおもちゃを与えてみましょう。
コングなどおやつが仕込めるものだと飽きずに遊んでくれるかもしれません。
ただし、誤食の危険がないおもちゃにしておく必要があります。

④トイレの場所を変える
ベッドやお気に入りの寝場所とトイレが近い場合、きれいにする目的で食糞している場合もあります。トイレとベッドをなるべく遠い場所に設置してみましょう。


食べたくないうんちにしてしまう

科学的な裏づけはありませんが、仮に吸収不良が原因で食糞をしている場合、タンパク質を消化しやすくするため、フードに食肉軟化剤や消化酵素をトッピングする方法もあります。

●パパイア(パパイン)
●パイナップル(ブロメリン)
●キウイフルーツ(アクチニジン)
●メロン(ククミシン)
●ヨーグルト
●カッテージチーズ   など

また、より攻撃的なアプローチとして糞自体に刺激性のあるタバスコ、ビターアップル、マスタード、コショウあるいはトウガラシをトッピングすることを勧める獣医師もいますが、トッピングされていない糞は食べてしまうという問題に発展する可能性が出てきます。
テキサスA&M大学の動物行動学者であるDr. Kathalyn Johnsonはホウレンソウにも同様の効果があるといいます。ホウレンソウに豊富に含まれている鉄分が、糞の臭いに影響を与えるのでしょう。

ペットショップで市販されている食糞防止サプリメントには、野菜の抽出物やチアミンあるいはトウガラシが配合されていますが、原理は同じです。サプリメント自体の味はほとんどありませんが、消化管を通って移動すると、糞が非常に苦くなり犬の嫌いな味にさせる作戦です。

実は食糞を100%防止する方法が1つだけあります。それは犬に口輪をすることです。そうすれば留守の時でも食糞を防ぐことができますが、うんちを食べられない=フードも食べられないということなので長時間の留守番には向いていません。
現時点では犬が食糞する原因とメカニズムが解明されていませんので、食糞するすべての犬に100%の効果が期待できる治療方法は残念ながらありません。


おわりに

食糞する理由は犬によってさまざまなので、効果のある対策もそれぞれに違うと言えます。いくつかの方法を試しているうちに気が付いた頃には食糞癖が無くなっていた…という話もよく聞きますので、あきらめずに愛犬に合う対策を探してみてくださいね!