猫はそのミステリアスな立ち振る舞いから、世界中で何か不思議な力を持つ生き物とされてきましたが、中でも古代エジプトにおける猫の神格化はとても有名です。猫を神様とあがめ大切にし、猫のミイラが発見されたり、壁画に猫の絵が今でも残っているのですが、その壁画の猫とそっくりな容姿をした猫がいることをご存知でしょうか?
今回はこのエジプトの壁画そっくりの猫、「アビシニアン」についてお話します。
アビシニアンの歴史
アビシニアンは1800年ごろイギリスで作られたとされ、1896年にイギリスの猫の血統登録団体に登録されています。しかし、それより以前の起源については諸説があり、エジプトに生息していた野生猫、リビアヤマネコを飼い馴らしたものである、という説や、1868年にイギリス・アビシニア(エチオピア)戦争の時にイギリス兵がアレクサンドリア港にいた「ズーラ」という名前のメス猫をイギリスに連れて帰り、イギリスの猫とかけ合せて作ったという説、東南アジア原産の猫にイギリスのドメスティックショートヘアをかけ合せて作り上げたという説などがあり、中には日本猫のキジトラを祖先に持つという説さえあります。どれもさだかではなく、本当のことは分かっていません。
イギリスで人気の出たアビシニアンは1900年ごろにアメリカに渡り、1938年にアメリカのキャットショーで登録されました。それ以来アメリカでは常に人気の上位をキープしています。
そしてその後、1964年に日本で初めて登録が行われ、そのエキゾチックな容姿に魅了された人たちによって今も高い人気を保っています。
アビシニアンの特徴
体格はスマートな体型で長い脚と胴体をもつフォーリンタイプです。
全体的に筋肉質で手足もしっぽも非常に細長くエレガントなイメージで、長い首から胸にかけてのラインが正に古代エジプトにみられる猫の像を彷彿とさせます。あごは細く、丸みのある逆三角形の顔立ちに大きな耳と大きなアーモンド形の目がついています。目の色はグリーンかゴールドで、目のふちの黒いアイラインとそこから横に伸びるクレオパトララインと呼ばれる模様が印象的な顔立ちを作っています。
アビシニアン独特の被毛
アビシニアンの毛色はルディ(深みのある茶色)、レッド(明るい茶色)、ブルー(銀色のような灰色)、フォーン(ミルクをたっぷり入れたココア色)の4色で、ルディが一番多く見られます。
短毛ですが、とても密な下毛をもつダブルコートで、光を受けるとキラキラと輝き、黄金の毛皮を持つ猫、と言われることもあります。
そしてアビシニアンの毛で最も特徴的なのは「ティックドタビー」と呼ばれる模様です。毛の一本一本に濃淡のしま模様があり、それが光の加減で細かな模様となって全体に濃淡がつくため、とても繊細な印象を与えます。ノウサギの毛の色に似ているためイギリスでは「バーニー(ウサギ)キャット」と呼ばれたこともありました。
犬のような猫?
アビシニアンは一見野性的なイメージで、身のこなしも敏捷で小さい頃は非常にやんちゃです。好奇心旺盛でその非凡なジャンプ力で部屋のどこへでも行ってしまい、おもちゃやボールなどで遊ぶことも大好きです。また、運動神経だけではなく非常に賢く物覚えが良いため人の言うことをよく理解し、すぐにボールを投げてとってくるような遊びもできるようになります。名前を呼ぶと返事をしながら走ってきたりする子もいるため、犬のような猫と表現する人もいるほどです。
とってもおしゃべり
そんなアビシニアンですが、成熟すれば物静かで大人しい猫となり、とても甘えん坊な性格が強調されてきます。どこに行くにも人の後をついて歩き、抱っこをすると激しくからだをすりつけたりしてきます。小さな声でよく自己表現をし、その声は「鈴を転がすよう」と表現されることもあります。人が話しかけると優しい声で返事をしてくれるところが飼い主さんにとってはたまらない魅力のようです。
かかりやすい病気
全てのアビシニアンで最も注意しなければいけないのは肥満です。アビシニアンはもともとほっそりとした骨格をしていますが、食べることが大好きで、欲しがるままに食べさせているとあっという間におなかがたるんだ猫になってしまいます。肥満はそのままにしておくと糖尿病や関節疾患、肝機能不全など別の病気を引き起こす原因となるため、普段から食事管理はきちんとしておく必要があります。
また、腎アミロイドーシスという、たん白質の一種であるアミロイドが腎臓に沈着して腎機能不全を起こす病気が遺伝性疾患として知られています。
そのほかにも拡張型心筋症という心臓病や先天性甲状腺機能低下症というホルモン疾患などがあるようです。
おわりに
アビシニアンの深みのある茶色は他の品種の猫にはなかなか見られない色です。その美しさに魅了されて飼いはじめた方は、次にその性格の良さにびっくりするようです。よく遊び、よく眠り、人に優しく、声も小さい、現代の日本の室内飼育に適した猫といえるでしょう。
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