ショック状態とは

「そんなことがあったなんて、ショック!」というように、私たちは日頃何気なく「ショック」という言葉を使いますよね。ですから、動物病院で「ショック状態になっています」と聞いてもピンとこない方が多いようです。しかし、病院で使う用語としての「ショック」状態とは、実は命に関わる重大な症状なのです。


ショックとは

医学用語としての「ショック」とは、様々な原因によって全身に血液が流れなくなり、体の各場所で酸素不足の状態が生じる状態のことを指します。私たちの体は血液によって酸素や栄養が隅々まで運ばれることで生命活動を維持しています。ですから、ショック状態になってしまった場合、速やかにその状態を改善するための治療を始めないと、体のあちこちで臓器不全を起こし、最悪の場合、死を招くことになってしまいます。


ショックを起こす原因

様々な原因でショックを起こすことが知られています。主なものを挙げてみましょう。


大量の出血

怪我などによって短時間で大量に出血してしまった場合、全身の血液が少なくなってしまうため、血圧が低下して全身に血液を流せなくなってしまい、ショック状態となります。


広範囲のやけど

広範囲に重度のやけどを負ってしまうと、皮膚の血管から液体成分が大量に染み出てきてしまうため、血液の全体量が少なくなり、ショック状態に陥ってしまいます。


循環不全

心臓の働きが悪くなって十分に血液を全身へ送り出すことができなくなってしまうと、ショック状態に陥ります。


敗血症

細菌の毒素によって、末梢血管が拡張したままになってしまうことがあります。すると血管は容積だけ増えて、血液は量が変わらずにゆっくりとしか流れることができないため、ショック状態を引き起こしてしまいます。


アナフィラキシーショック

食べ物や薬品などが原因となって激しいアレルギー反応が起きると、毛細血管から体液が染み出てくるのと同時に、末梢血管が拡張して、敗血症の時と同じように血液の流れが悪くなってショック状態を引き起こしてしまいます。


ショックを起こしたときの症状

ショックを起こした直後は、次のような症状が見られます。

  • 全身が低酸素状態になるため、元気がなく動こうとしなくなります。
  • 少しでも多く酸素を取り入れようと、浅く速い呼吸をします。心拍数も早くなります。
  • 体の末端に中心部からの温かい血液が行かなくなるため、手足は冷え、歯茎や結膜などの血色が悪くなって白っぽく見えるようになります。また、末梢血管再充填時間(CRT)といって、歯茎を指で抑えて、再び血色が戻るまでの時間が健康であれば1秒以内であるところが、数秒かかるようになってしまいます。

これらをそのままにしておくと、

  • 意識がなくなり、呼びかけに反応しなくなります。
  • 呼吸は徐々にゆっくりになっていき、不整脈などが見られるようになります。
  • 体温が37度以下になり、からだを触ると冷たく感じるようになります。

このような症状が見られるようになり、適切な対処をしないと、死に至ってしまいます。


ショックを起こしたときの対処法

どのような場合でも、ショックを起こしている動物は一刻も早く動物病院で処置を行ってもらわないといけません。すぐに動物病院に連絡をして、指示を仰ぎながら連れて行きましょう。

怪我で出血をしている場合は止血を行う必要があります。もしも、呼吸が止まっている場合には人工呼吸を行いつつ処置ができるよう、日頃から応急処置の方法を頭に入れておくと、いざというときに役に立ちます。

また、体温が低下している時には全身を毛布で包んであげましょう。運ぶ時にはなるべく体を水平にして、体の一部に無理な力がかからないように気を付けましょう。


まとめ

かなり重症であるということを理解しましょう

病院に連れて行ったら、すぐに点滴や酸素吸入などの処置を行い、怪我や感染症といったショックの原因となるものの治療を開始しますが、それでも手遅れになってしまう場合があります。

かなり危険な状態であることを覚悟しておきましょう

「ショック」という言葉ほど、通常使われている意味と、医学的な意味が異なるものはないかもしれません。もしもショック状態に陥ってしまった場合、かなり危険な状態であるということを理解し、冷静な対処が必要となります。

そういった理解の違いがないように、普段から動物病院での説明の中で少しでも疑問に思うことがあればすぐに聞いて、お互いに誤解のないようにすることがペットの長生きにつながるかもしれませんね。