犬に顔を舐めさせるのは良くないこと？

帰宅後、愛犬が飛びついて顔中をペロペロと舐めてくる、そのような経験はありませんか？飼い主としては嬉しいけれど、顔が愛犬のヨダレだらけになってしまい、少し汚いような気もします。

どうして犬は、人の顔を舐めようとするのでしょうか？しつけとしてやめさせた方が良いのでしょうか？

顔を舐める仕草の元になるもの

もともと犬の祖先であるオオカミは、子が親の口元を舐めることで親が食べていたものを吐き戻し、子は親が半分消化してくれた肉を離乳食として食べていました。

このように子オオカミが親オオカミの顔、主に口元を舐めるのは、食べ物をねだることを示しているのです。

顔を舐める仕草と群れ生活での習性

顔を舐めるという行為が子オオカミから大人の親オオカミに行われることから、食べ物をねだる行為であると同時に、「僕はまだ自分で狩りをすることのできない、子オオカミです」というアピールにもなりました。そして、群れの中の弱い個体が大人になっても強い個体に対して挨拶として顔を舐めたり、怒っている相手をなだめる時にも行われるようになっていきました。このように顔を舐めるという行為は、群れの中の順位や服従を確認するための行為であり、野生のオオカミからの習性として残ったのです。

犬が人の顔を舐める理由

先ほどの話のように、顔を舐めるという行為は、オオカミが犬へと変化を遂げても自分の群れ（飼い主の家族）に対して行われていると考えられます。つまり、犬が人の顔を舐めることは、「僕はあなたよりも弱くて小さな存在です。敵意は全くありません。ご飯をください。怒らないでください。」と言っているのです。

顔をいつまでも舐め続ける理由

人と会ったらしつこく顔を舐めまわし、いつまでもやめようとしない犬がいます。このような行動を取る犬は、強迫性障害を持っている可能性が考えられます。強迫性障害とは、自分がとても弱い存在であることに対して強い不安や不快感を感じ、それを打ち消したり振り払うために意味もなく人を舐め続け、舐めることを止めるとまた不安が生じて、また舐め続けてしまう、一種の心の病です。

顔を舐めさせるのはいけないことか

愛犬が飼い主さんの顔を舐めるという行為が服従を意味するのなら、一見、続けさせても良いように思えます。しかし、犬の口の中にはパスツレラ菌やブドウ球菌をはじめ、約150種もの細菌が生息しているといわれているため、口の周囲を犬の唾液でびしょびしょにされるのは衛生的に問題があります。さらに犬は排泄をした後、自分でお尻を舐めてキレイにすることがあるため、もし回虫などの消化管寄生虫を持っていた場合は、人の口元を舐めることで犬から人へ寄生虫が感染する可能性もあります。

止めさせる方法

犬はあくまで人に好意を持っていることをアピールしようとして行っていることなので、頭ごなしに怒ったとしても、なぜ怒られたのか理解することができません。自分は弱いという思いから行っているため、怒ることによって「ごめんなさい。怒らないで。」と、さらにエスカレートすることも考えられます。したがって、無理に止めさせるのではなく、できない状況を作ることがこの行為を止めさせる効果的な方法です。

例えば、帰宅後に飛びついて顔を舐めようとするのであれば、クレートトレーニングをして、興奮が落ち着いたらクレートから外に出すようにします。また、顔を舐めようとしたらすかさず、「おすわり！」という全く異なる指示を出し、おすわりをしたことを褒めるようにして、顔を舐めるチャンスを減らしていきます。

愛犬がしっぽを振ってペロペロと舐めてくると、飼い主さんは「こんなに自分のことが好きなんだ！」と嬉しく感じるでしょう。しかし、人と共に生活する犬であれば、節度というものも教えていかなくてはなりません。お互いに態度で示さなくても愛情を感じ合えるような関係を築いていく方が、心が通じ合っているといえるのではないでしょうか？