妊娠した愛犬との生活

愛犬に子供を産ませたいと思ったことはありますか?

実際に、妊娠した場合にはどうすればよいのでしょうか?妊娠判定の仕方は?妊娠期間は?分娩の兆候はわかるの?妊娠中の管理はどうすればいいの?

今回は、妊娠犬に関するさまざまな疑問にお答えします。


犬の妊娠、どうしたらわかるの?

《人の場合》

まず、私たち人間のお話からしますと、妊娠したのかどうかをもっとも早い時期に確実に知る方法は、尿検査による判定です。尿検査による妊娠判定では通常、尿中のホルモンを検出します。このホルモンは受精卵から発生する絨毛(じゅうもう)という組織から分泌されるもので、妊娠した場合にのみしか検出されません。

このホルモンが尿中に排出されるようになるので、これを妊娠判定検査薬で検出することで妊娠の判定が可能になるわけです。妊娠の判定には、受精から最低でも2週間以上あける必要があります。

《犬の場合》

人間では妊娠したときにのみ分泌されるホルモンがありますが、犬は妊娠してもしなくても、同じホルモン変化を辿ります。したがって、犬は人間の妊娠判定検査薬のように尿検査で妊娠を診断することができません。犬でもっとも早い段階からできる信頼性の高い妊娠検査は超音波検査です。最初に交配してから21~24日で胎児の心拍を検出することができます。しかし超音波検査は、胎児の頭数を確認するには信頼できる方法ではありません。

通常、獣医師が腹部をさわって妊娠を判断するのは25~36日後となります。しかし、30日以降では子宮はさらに膨張するため、腸管と妊娠子宮を区別することが難しくなります。また、45日後にはレントゲン検査で胎児の骨格が確認できます。


犬の妊娠Q&A

では、わかりやすく犬の妊娠に関する疑問に一問一答でお答えしていきます。

犬の妊娠期間は何日くらい? 

人間の妊娠期間は280日(40週)±15日といわれていますが、犬の場合はグレートデーンであってもチワワであっても、体のサイズに関わらず子犬を分娩するには平均63日(9週間)が必要です。


母犬にはカルシウム剤(サプリメント)を与えた方がよい? 

人間の妊婦は、妊娠中にカルシウムを多く含む食品を摂る工夫が必要であることはご存知のとおりです。高血圧、子癇前症などの妊娠中毒症のリスクが低下することが世界保健機関(WHO)の研究によって明らかになっています。

しかし、妊娠中の犬にはカルシウム剤(サプリメント)を与えてはいけません。サプリメントを与えていた犬は、帝王切開の確率を高める陣痛微弱を引き起こす危険性があります。さらに、出産後に骨からのカルシウムの放出が不十分となり、筋肉の虚弱や発作などの症状を引き起こす低カルシウム血症に陥りやすくなります。


いつ出産するか知るにはどうすればよい? 

出産の約1週間前から検温するとよいでしょう。健康な犬の正常体温(直腸温)は38.1~39.2℃、健康な猫の正常体温は37.8~39.2℃です。犬も猫も出産直前には体温が数度(37.2℃を下回る)下がります。

しかし通常、体温はかなり早く回復するので、見逃してしまう可能性があります。ですから、妊娠の最後の週は少なくとも1日2回の体温測定を行う必要があります。分娩は体温低下が起こってから24時間以内に始まります。


胎盤は食べさせた方がよい?

「分娩後に母犬が胎盤を食べないと母乳を作らない」というのは古い迷信です。胎盤を食べると嘔吐することもあります。食べてしまっても心配する必要はありませんが、食べさせる必要は特にありませんのでできるだけ胎盤を除去して下さい。


犬にもつわりはある?

人間の場合、つわりは妊娠6~11週頃の約半数の妊婦にみられますが、犬のつわりに関する記載は少なく、あまりよくわかっていません。妊娠3週でつわりに似た軽い吐き気や食欲の減退が起こりますが、通常1週間以内に落ち着きます。嘔吐が継続する場合は、その嘔吐が妊娠から来ることだと判断せず動物病院を受診することをおすすめします。


母犬のワクチン接種はどうしたらよいの?

子犬は、母犬から生後12時間以内に初乳を飲むことにより、免疫(移行抗体)を持つことができます。ですから、妊娠前に母犬が確実な免疫を持っている必要があります。しかし妊娠中の犬にワクチン接種をする必要はありません。繁殖前にワクチン接種を済ませておきましょう。


妊娠中に見られる母犬の変化

最後の数週間で行動が変化することが多いようです。愛情を求めたり、注意を引こうと努力します。また胎児の成長に伴って子宮が拡大すると、雌犬は落ち着かなくなり、人目を忍んだ場所を捜し求めるようになります。短気になることもあるので、小さいお子様がいらっしゃるご家庭では注意が必要です。

実際、妊娠5週目までは目に見える変化はほとんどなく、5週を超えると体重の増加に気付き始めます。しかし胎児が1~2頭しか存在しない場合は出産までの体重増加はわずかの場合がほとんどです。そして、お腹は最後の3週間で大きくなります。乳腺は早ければ分娩前7~9日で発達しているかもしれませんが、通常分娩前1~2日まで乳汁は分泌されません。


妊娠したら母犬の食事はどうすればよい?

妊娠5~6週で子犬用フードに変更することが推奨されています。下痢や嘔吐を引き起こす可能性があるので、あまり妊娠早期に食事を変更する必要はありません。妊娠3週目までは必要な栄養性はあまり変わりませんし、妊娠5~6週までカロリー摂取量を増やす必要もありません。

妊娠1ヶ月は通常のドックフードを与え、妊娠2ヶ月目(妊娠35日)から1週間かけて徐々に子犬用フードに変更します。妊娠を維持するために必要な食事量は通常の1.5倍といわれています。

子犬のサイズが大きい場合は5週、小さい場合は妊娠6週から摂取カロリーを徐々に増やします。妊娠後半になるとお腹の中のスペースが子犬で奪われるため一度にたくさん食べることができなくなります。したがって、少量を頻回にわけて与えてあげることがよいです。

分娩後の授乳期は母犬の必要要求カロリーが3~4倍増加するので、子犬が6週齢で離乳するまで母犬に子犬用フードを与えるべきです。


まとめ

妊娠している犬は、人間と同じく精神的にも敏感になることが多いです。そんな母犬にとって、何より心強いのは信頼できる飼い主さんがそばにいて励ましてくれることです。母犬の精神状態が良くないとホルモン分泌が不安定になり、正常なお産が進まず難産に陥りやすいともいわれています。

飼い主さん自身が事前に必要な知識を持って、きちんと落ち着いて対応できるようにしておくことが重要です。また、いざというときは動物病院に連れて行ってあげられるように事前に妊娠しているという情報を動物病院へも伝えて協力してもらえるような状況を準備しておくことが大切です。