ペットの骨格の秘密

私たちの体をつくるものでもっとも基礎となるもの、それは骨です。骨が組み合わされてできている骨格は、動物の種類によってそれぞれ異なり、その種としての特徴があります。

今回は人間と犬と猫のそれぞれの骨格を比較しながら、ペットの骨格の秘密を探ってみましょう。


人間にあって、犬や猫にはない骨は?

鎖骨は私たちが自分の肩を触ったときに触れる横に伸びた骨ですが、犬や猫には鎖骨がありません。なので、人間の肩甲骨が鎖骨に支えられて横に広がり“肩”を作っているのに対し、鎖骨がない犬や猫の肩甲骨は横には広がらず上下の縦方向についているため、「肩がない、急下降のなで肩」のように見えます。さらに、それに伴い肋骨も人間のように左右には広がらず筒状になっているため、顔が入るくらいの小さな穴から抜け出すこともできるのです。

また、犬の肩甲骨は筋肉によって体の側面でつながっているため、人間のように真横に開くことはできません。そのため、脇を広げ両腕の付け根を持って抱えあげるのは犬にとって負担になってしまいます。ちなみに猫は、肩甲骨が首の後ろ側にあり、足の動きと連動しています。これが猫の柔軟さの理由です。

そして、指の数も違います。一般的には前足が5本、うしろ足には4本しか指がありません。うしろ足の親指は退化し消失しています(まれに残っている場合もあります)。前足の親指は少し上のほうにあり、親指以外の4つの指を地面につけて歩いています。


犬や猫にあって、人間にはない骨は?

人間の骨の数は約200本なのに対し、犬では約320本、猫では約240本もあります。

人間ともっとも違う場所は尾椎(しっぽを構成している骨)で、犬で6~23個、猫で16~21個もあります。その反面、人間の尾椎は3~6個と少なく、ほとんど退化しており「尾てい骨」と呼ばれます。

また、人間の胸椎(上部の背骨)の数は12個なのに対し、犬や猫では13個、人間の腰椎(下部の背骨)の数は5個ですが、犬や猫は7個です。犬や猫は背骨の数が多いだけ胴体も長いので、4本足で歩いてバランスを取りながら柔軟な体の動きを可能にしています。


物を握れる人間、握れない犬・猫

次に手の骨を見てみましょう。人間は長い5本の指を使って物を持ったり握ったりすることができます。しかし犬や猫の場合は親指が短く、ほかの指と向かい合わせにできないため、物を握ることができません。さらに、クッションの役割をしている厚い肉球も、指を曲げられない理由の一つです。なお、犬や猫では指の先端にある骨である末節骨のことを“鉤爪骨(かぎづめこつ)”ともいい、普段は縮んでいるものの、いざ獲物を捕まえたり押さえたりするときにその骨をアーチ状に伸ばすことができます。犬や猫は人間のように物を握ることまではできない代わりに指の機能を発達させて、それに近い働きをしているんですね。


犬や猫は常に背伸びをしている

犬や猫の立っている姿をよく見てみると、常に“背伸び”をしている状態であることが分かります。前足も指先だけで立っており、前足の上のほうにある小さな肉球が、人間でいうちょうど手首にあたるところになります。人間がつま先からかかとまで足の裏全体で体を支えて歩くのに対し、犬や猫は4本足ではあるものの、指だけで体重を支えて歩きます。そのため、かかとの骨が人では発達して大きいのに対して、犬や猫はとても小さな骨しかありません。これははるか昔から狩りをしていた犬や猫にとって、地面についている面積が少ないほうが、より足を蹴り上げる労力を減らすことができ、速く走れるからだといわれています。


猫の背骨はやわらかい?

先ほど犬や猫は人間よりも胴体が長いというお話をしましたが、その骨格である背骨一つ一つの形も、犬では人間よりも細長く、猫はさらに細長い形をしています。しかも猫は人間よりも胸椎や腰椎の数が多いので、人間に比べて背中がとても長いのです。その長さがあってこそ、背中を柔軟に曲げることができるのです。人間が背骨を曲げて歩く「猫背」という言葉はまさにここからきているんですね。


短足種の秘密

特に犬では、犬種によっていろいろな体型があります。しかし足が短くても体が大きくても胴長でも犬は犬、骨の数はすべて同じです。

「骨の数が同じなら、短足種の足の骨はどうなっているの?」と思うかもしれませんが、違いはそれぞれの体型によって骨の「形」が変わるということです。足の短い犬は、例えると低いテーブルの太く短い脚のような骨の形をしています。そう考えると、一般的な犬に比べ関節をスムーズに動かしづらいのがわかるかと思います。その骨の形の違いがもととなり、無理をすると脱臼など骨格系の病気を起こしやすくなってしまうこともあります。


まとめ

人間と犬と猫の骨格の違いを知ることで、知識が増えるだけでなく、病気や怪我の予防にも役立ちます。さらにその犬種・猫種によってかかりやすい怪我や病気も異なってきますので、正しく理解して健康な骨格を保ちましょう。