ウェルシュ・コーギー・ペンブローク

「ウェルシュ・コーギー・ペンブローク」は日本での歴史は浅いですが、その名前を聞くと、だれもがあの胴長・短足で大きな耳の、ポテポテとしたかわいい歩き方をする犬を思い浮かべることができるほど、有名な犬種です。そんなユニークな体型を持つ通称「コーギー」ですが、実は牧畜犬でもあり、とても活動的な一面を持っています。

今回は、体型と相反する行動力を持つコーギーについてお話します。


歴史

ウェルシュ・コーギー・ペンブローク(以下、コーギー)の歴史は900年ほど前にさかのぼります。当時のイギリス国王であったヘンリー1世によってヨーロッパから招かれた織物職人と共に、イギリス海峡を渡りペンブロークシャー地方へ連れてこられた犬がそのルーツといわれています。そして、この織物職人達は農業や牧畜も行い、その際にコーギーは優れた“牧畜犬”として活躍するようになりました。

その後、家畜を追う優れた素質に加えて「背が低く、ずんぐりとした体型をつくりだしたい」というブリーダーの熱意によって、コーギーの改良は行われてきました。その歴史が、コーギーの特徴ともいえるあの体型を今も維持しているのでしょう。

現代ではエリザベス女王に愛されていることから“ロイヤルドッグ”として注目され、イギリス人をはじめ多くの人々に愛されています。


特徴

「この胴長・短足の体型で牧畜犬?!」とだれもが疑うような、特徴ある体型のコーギーですが、この体系には理由があります。実はコーギーは牛など大型の家畜の番をするだけではなく、それとは全く逆の作業である追い払う目的でも活躍しました。当時の広大な牧草地には境界がなく、他人の牛が自分の土地の牧草を食べてしまうこともよくあり、それを嫌った牧場主がコーギーを「牛を追い払う犬」としても訓練し、ある時は自家の牛を守り、またある時は他の家の牛を追い払うという、人でも混乱しそうな複雑な作業を見事にこなしていたのです。

コーギーは牛を追い払う時に、牛の踵に噛み付きます。牛はその反撃で蹴り返しますが、コーギーの短足で体高が低い体型は、その蹴りを頭を下げて上手に避けるために作られたのです。また、その胴の長さがより遠くまでの跳躍を可能にするため、短足にもかかわらずそのスピードは目を見張るものがあります。この胴長・短足の体型と頭のよさがコーギーの誇りともいうべき特徴なのです。


ウェルシュ・コーギー・カーディガンとの違い

同じウェルシュ・コーギーという名前を持ち、ペンブロークと外見がそっくりな「ウェルシュ・コーギー・カーディガン」という犬種をご存知でしょうか。同じ犬種のようですが、その2種の歴史は異なり、実は違う犬種です。かつては、この二つの犬種を交配したことにより多くの類似点が生まれましたが、両犬種の昔のタイプを比較するとその違いは明らかです。

ペンブロークは尾が短く、カーディガンより胴が短く四肢はまっすぐで、被毛の毛質はより繊細です。鼻の形もカーディガンはスッと細長いのに対し、ペンブロークは太く短い傾向にあります。また、性格はペンブロークのほうがやや興奮しやすいといわれています。毛色もペンブロークがブラック&タン、レッド、フォーンの3種類に対し、カーディガンはブラック、ブラック&タン、セーブル、ブルーマール、ブリンドルとペンブロークと比べるとやや多いです。

現在はペンブロークとカーディガンのそれぞれの特質を強調することで、再びこの2犬種をできるだけ遠ざけようとされています。


性格

コーギーはとても明るく陽気な性格の持ち主で、なんといっても非常に活動的です。そのため、かなりの運動量を必要とし、お散歩には十分時間をかける必要があります。また、人に接することも大好きなので、アジリティーで一緒に楽しんだり、ゲームなどの遊びを生活に取り入れたりするととても喜びます。時には走るものを追いかけたり、噛み付いたりする衝動が強くなる場合もありますが、もともと順応性が高く物覚えがよいため、さまざなイベントに参加することができるでしょう。

このような性格から、コーギーが飼い主さんとよい関係を築きやすい犬種だということがよくわかりますね。


なりやすい病気

コーギーはその特徴でもある体型により、普段から背骨や腰に負担がかかっています。そのため腰や関節など骨格系の病気が発症しやすく、コーギーがなりやすい代表的な病気として椎間板ヘルニアや股関節形成不全などが知られています。そして、どちらの病気も体重の増加がさらに病気を引き起こしやすくしますが、日本でペットとして生活しているコーギーの多くは運動不足で肥満の傾向にあるため、注意が必要です。

その他にも気をつけたい病気として、てんかん、尿石症、網膜萎縮症などの病気があります。


まとめ

ウェルシュ・コーギー・ペンブロークはその性格と愛らしい体型から徐々に注目されはじめ、日本ではテレビCMや広告などに登場してから一躍人気の犬種になりました。お散歩やゲームなどでたくさん一緒に遊んで、陽気で活発なコーギーらしさをさらに引き出してあげてくださいね。

ペットクリニック.com

獣医師発信のペット情報サイト