猫の腎不全(慢性腎臓病)について

猫は「腎不全(慢性腎臓病)」という病気にかかりやすいということをご存知ですか?

猫はもともと、砂漠などの水分が少ない場所で生活していたといわれているため、少ない飲水量でも効率よく生活できるように、濃いおしっこをつくる機能をもった動物です。

しかし、濃い尿をつくれるということはその分腎臓への負担も大きいため、ほとんどの猫において、年齢と共にその機能が徐々に弱まっていきます。近年では、猫の寿命がどんどん長くなっているために、特に高齢の猫での腎不全はとても多くなっています。

今回は、そんな猫の「腎不全(慢性腎臓病)」についてお話していきたいと思います。


腎臓の役割

腎臓の役割は主に下記の4つです。

  • 老廃物や毒素を血液からろ過して尿を作る
  • 水分量や血液中の電解質の濃度を一定に保つ
  • 血圧を調整する
  • 赤血球をつくることに関係の深いホルモンを分泌する

腎臓の役割のなかでもっとも重要なのが「尿を作る」ことです。血液は肺から酸素を、小腸や大腸から栄養分を受け取って体中を巡回します。そして酸素や栄養分を配給しながら、体内で不要になった老廃物を回収して腎臓へと向かいます。腎臓は血液中にある再利用できるものと不要なものとを仕分けし、再利用できる栄養分は血液と一緒に体へ戻し、老廃物や毒素、余分な水分は尿として体の外へ出すために膀胱へ流していきます。


尿が黄色い理由

人間も犬も猫も尿の色は黄色ですが、この色は血液中にある老廃物の色です。そのため、水分をたくさん取った日のおしっこは、老廃物の量と比べて水分が多くなっているため、薄い黄色になります。逆に、たくさん運動をして汗をかいたときや、水分をあまり取っていない日のおしっこは老廃物の量に対して水分が少なくなっているために濃い黄色になります。

体の中では毎日決まった働きを続けているため、ほぼ決まった量の老廃物が出ます。それに対して水分量は生活環境によって変わってくるため、その時の体の水分量に伴って黄色(老廃物の色)が濃くなったり薄くなったりするのです。


猫のおしっこ

猫のおしっこは、犬や人間のおしっこと比べると濃い黄色をしていて、においが強いといわれています。

これは、犬や人間は毎日たくさんの水を飲むのに対して、猫はあまり水を飲まないため、老廃物の量に対して水分が少ないせいです。猫があまり水を飲まないのはもともとの習性なので、食欲や元気があれば心配はいりません。また、おしっこのにおいは老廃物から出るものなので、おしっこが濃くなればにおいも自然と強くなります。


「腎不全(慢性腎臓病)」ってどんな病気?

では「腎不全(慢性腎臓病)」とは、どのような病気なのでしょうか?

まず「不全」とは、働きが100%ではないということを指します。腎臓が「不全」になると、血液中の老廃物を排出する力が弱くなっていきます。排出できなかった老廃物はそのまま体の中に留まってしまうのです。そうなると、腎臓は今までと同じ量の老廃物を排出しようとするために、より多くのおしっこを作ろうとします。そのため、腎臓の機能が低下すると、水をたくさん飲むようになります。また、おしっこの中の老廃物が減るため、おしっこの色は薄くなり、においも弱くなっていきます。

さらに、老廃物をおしっこから体外に出すことができなくなると、老廃物が体に蓄積していきます。老廃物は体の機能を悪くしてしまうため、食欲が低下したり、気持ち悪くなり吐いてしまったりします。この様な状態になると結果として体はどんどん痩せていってしまい弱っていきます。


腎不全(慢性腎臓病)の症状

腎不全(慢性腎臓病)の症状として、

  • 多飲多尿
  • 脱水
  • ぼーっとしていることが多い
  • だるそうにしている
  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 嘔吐
  • 貧血
  • 血圧の上昇
  • 口臭

などがあげられます。もしも、これらに心当たりがあれば動物病院で受診して、早めに病気を発見し対処するようにしましょう。


腎不全(慢性腎臓病)の診断

腎不全の症状がみられた場合は、早めに動物病院で以下のような検査を受けましょう。

尿検査

尿検査では、尿の濃度や尿タンパクの有無を検査します。中齢(5~6歳)以降の猫では、特に定期的に検査を受けるとよいでしょう。

超音波検査

腎臓の形をみることで、腎不全(慢性腎臓病)の原因を探します。

血液検査

血液中の尿素窒素やクレアチニン、カルシウムやリン、タンパクなどの量を測定し診断します。また、最近では腎機能の評価の指標としてアミノ酸の血中濃度が注目を浴びており、尿素窒素やクレアチニンよりも早期に発見できると考えられています。

これらの検査結果により「3カ月以上、持続して腎臓の機能がダメージを受けている」と判断された場合に、腎不全(慢性腎臓病)という診断結果が出されます。


腎不全(慢性腎臓病)の治療方法

腎不全(慢性腎臓病)によって壊れてしまった腎臓の機能を元に戻すことは残念ながらできません。そのため、腎不全(慢性腎臓病)は「これ以上悪くさせない」ための治療を行います。

主な治療内容としては、

食事療法

タンパク質に含まれるリンを制限し、腎臓への負担を少なくします。

内服薬・サプリメント

毒素を体内にたまりにくくする・毒素の排出を促す、血圧の上昇を抑える、腎機能低下を抑制するといった目的があり、状態により内服薬やサプリメントの選択をします。

点滴(静脈点滴や皮下点滴)

水分の摂取による脱水の改善と、老廃物の排出を促します。



まとめ

体内の老廃物がおしっこから排出されず、ずっと体の中にいることが健康に良いわけがありません。また、腎臓は悪くなると治療をしてもその機能は元には戻らないため、なるべく初期の段階で病気を早期発見し、早期に治療を開始することがとても大切です。腎不全(慢性腎臓病)は一度かかってしまうと、一生付き合っていかないといけない病気なのです。

このことを飼い主さんがよく理解し、愛猫のために何が一番良いのか、かかりつけの獣医さんとよく話し合って悔いのない選択をしてほしいと思います。

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