身近に潜む寄生虫 ~ノミってこんな生き物~

「ペットがしきりに体を痒がっている。動物病院で検査をしたらノミがいた。」

「室内飼いで外に連れ出してないのに、ノミがついている。」など、飼い主さんが思っている以上に、ペットにノミが寄生していることが多いようです。ノミの被害は夏だけだと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は夏以外の季節にもノミの被害が出ているのです。

今回は、身近に潜んでいるノミの生態についてお話していきます。こちらを参考にノミからペットを守ってあげてください。


ノミの実態

漫画でよくみるノミはぴょん、ぴょんと地面を飛び跳ねていますね。

しかし、実際に私たちが目の当たりにするノミは、掻き分けたペットの毛の間を走り去る黒っぽい小さな影です。大きさは約2ミリで形も全体に平べったい涙型をしているために、ゴマのようにみえます。非常に目の細かいノミ取りクシを使うと、しっぽの付け根や首輪の周りなどペットが自分で舐めにくい場所で比較的よくみつかりますが、非常にすばしっこいため、捕まえるのはとても困難です。よくノミと間違えてしまう毛の根元にある黒い汚れの塊はノミの糞で、ノミが吸った血でできているため、湿ったティッシュの上に置いておくと溶けて赤い色がにじみ出てきます。


ノミのライフサイクル

ノミのライフサイクルは、卵から幼虫、さなぎ、成虫という4段階の発育を経て、姿を変えながら成長しています。この発育段階によって効く薬や効かない薬があること、さらには犬・猫の体表にいる成虫だけを取り除いてもすぐに卵から発育・繁殖することが、ノミを簡単に駆除できない理由となっています。

ノミは、通常1日~6日間で卵からふ化して幼虫になり、2度の脱皮をした後、さなぎから成虫になります。ノミの成虫は、光や熱、二酸化炭素に反応してペットの体表に寄生します。寄生するとすぐに吸血を開始し、36時間~48時間以内に産卵します。その後も体表上にとどまり、吸血と産卵をくり返して、通常1~2カ月で一生を終えます。ノミの成虫が犬・猫の体表で過ごすのは、生涯で見るとほんの一瞬にすぎません。多くは犬・猫の周囲(飼育環境)で過ごしているのです。

つづいて、ノミの生態について詳しくお話していきます。

ノミの卵の大きさは、0.5ミリ程度で半透明の楕円形をしています。表面がつるつるしているため、ペットの体で血を吸っているノミが産んだ卵は、すぐにペットの寝床や家の中の床に落ちます。卵は温度が16度以上、適度な湿度があれば数日で孵化しますが、適した状態でなければ何ヶ月も卵のままで条件がよくなるのを待っています。

幼虫

孵化したノミの幼虫は、半透明のイモムシのような形をしています。家の中ではペットの寝床の敷布やカーペットの中に潜んでいて、ペットのフケや成ノミの糞などを食べて大きくなります。順調に大きくなった幼虫は、1週間ほどで次のステップ、蛹(サナギ)になります。

サナギ(蛹)

サナギは楕円形をした細い糸で作られた繭の中に入っています。低温や乾燥にも非常に強く、適した環境になるまで一年近く成虫にならずにじっとしていることができます。

成虫

蛹から羽化した成虫は、犬や猫などが通りかかるのをじっと待っています。そして、振動や呼吸による二酸化炭素でその気配を察すると、一気に自分の体の100倍もの高さまで飛びあがり、ペットの体に取り付いてすばやく毛の奥にもぐりこむのです。一度ペットについてしまったノミが体の上を跳ねることはありません。毛の根元でひたすら血を吸っています。血を吸ったノミのメスは、1~2日後にすぐに卵を産むようになります。一日に約50個の卵を産みながら、状態がよければノミは120日も生存し、その間に2,000個もの卵を産み落としていきます。つまり、オスとメス2匹のノミがあっという間に2,000匹になってしまうということです。


年中ノミの被害にあうわけ

ノミは成虫でも13度以上あれば活発に活動することができると、ご説明しました。

以前までは春~夏の時期にノミに寄生しているといわれていましたが、近年は室内犬が増え、冬場でも暖房等により、ノミにとって快適な暖かい環境が整っております。そのため、冬場でも繁殖を繰り返すことができるため、年中、注意が必要となります。


恐ろしいノミの被害

ノミはペットに痒みをもたらすだけではありません。ノミの唾液に対してアレルギーのあるペットは激しい痒みと共にひどい皮膚炎になり、毛が抜けたり皮膚が傷ついたりしてしまいます。また、ペットにつくノミのほとんどはネコノミという種類ですが、これは時として人にも被害をおよぼすことがあります。さらに、ノミは条虫という腸に寄生する虫や猫ひっかき病といわれる、人の病気の病原菌の運び屋としても知られています。


ペットをノミから守るために

いったんノミアレルギーになってしまうと、たとえ1匹がついただけでもペットはひどい皮膚炎を引き起こしてしまいます。生活空間のノミは根絶し、外からはノミをもらってこないことがノミの被害を予防することになります。ノミは成虫でもとても小さな虫で、卵に至っては1ミリ以下の大きさのため、目に見えるものだけを退治するような方法では難しいかもしれません。ペットには寄生している成ノミを駆除する薬と共に、卵やサナギが成長しないようなノミ対策薬を使うことが大切です。現在は、どちらも1つの薬で駆除ものもありますので、詳しくは、かかりつけの動物病院へ相談してみてください。