愛犬の妊娠前に気をつけてほしいこと

昔から犬は安産の象徴とされてきましたが、品種改良で体が小さくなった犬たちは、必ずしも安産ではありません。

安全に出産できるよう、きちんと準備を整えてもらうため、チェックポイントを挙げてみました。犬の妊娠・出産について、今一度考えてみましょう。


犬は安産じゃない? ~妊娠・出産の前に考えよう~

「かわいい愛犬の子供を見てみたい」、「愛犬に出産・育児を経験させて心身共に成長させたい」などと思う方もいらっしゃると思います。もちろん実際に出産・育児を経験することは、愛犬にとっても愛犬のご家族にとってもすばらしい経験になります。

しかし、犬にとって出産はやはり命がけで、近年の品種改良の結果、昔と比べて体が小さく、難産が非常に多いといわれています。「犬って安産ではないの?」と思う飼い主さんも多いと思いますが、出産に伴うリスクが大きくなっているのが現状です。

また、日ごろ運動不足になっている犬は体力的に出産が厳しかったり、甘えん坊の性格の犬は、母親としての意識が薄くなり産んだ子犬を放置してしまうこともまれにあります。愛犬の繁殖を考える際は、以下に挙げるチェックポイントを参考に、飼い主としてきちんと対応できるか、よく考えてから行うようにしましょう。


犬の妊娠・出産前のチェックポイント

【 ①家族の協力体制を整える 】

まず出産予定日の確認をしましょう。犬の妊娠期間は通常63日(60日~64日)ですが、さまざまな理由により前後5日程度はずれる可能性があります。出産の可能性がある前後5日間は、誰かがそばにいてあげれるように予定を調整し、難産の場合は最寄りの動物病院まですぐに連れていけるようにしましょう。

出産後も、母犬が育児放棄してしまった場合を考え、できれば育児中(子犬が3ヶ月くらいになるまで)は、母犬のそばに誰かがいる環境が望ましいです。もしも、母犬が育児放棄をしてしまった場合に、代わりに人の手でミルクをあげて育てる必要があるからです。ミルクは一日に何度もあげないといけません。ご家族全員が育児に協力する体制を整えることが大切です。

また、いつもは大人しい犬でも出産・育児という大仕事を行っている最中は、気が立つことがあります。愛犬が穏やかに過ごせるように家族全員で気を使えるようにしましょう。


【 ②夜間対応可能な動物病院を探す 】

出産は夜中に行われることが多いので、かかりつけの動物病院が予定日前後に夜間対応が可能かどうか確かめておきましょう。かかりつけの動物病院で対応できない場合は、対応してもらえる病院を紹介してもらうなど、事前に探しておくとよいでしょう。難産の場合は帝王切開になることもあるので、費用がどのくらいかかるかも確認しておきましょう。


【 ③子犬の将来について考える 】

犬は複数頭の子犬を産むため、生まれた子犬を生涯育てていくことは、とても大変なことです。あらかじめ子犬の貰い手を見つけておくか、もし貰い手が見つからなかった場合、すべての子犬を飼うことができるのか、事前に考えておきましょう。

また、生まれつきの病気を持った子犬が生まれてしまうこともあります。そういった場合に、医療費を払い続けながら子犬を育てることができるのか、家族で話し合っておくことも大切です。


【 ④タイミングを考える 】

初回の発情(生理)時は、まだ体が成長しきっていないので2回目以降に繁殖をするのが一般的です。出産させるのは5歳くらいまでするとよいでしょう。体の大きさは、できればメスの方が大きく、オスの方が小さい方が理想的です。

小型犬は、大型犬と比べると難産になることが多く、場合によっては帝王切開になる可能性が高いといえます。

同じ犬種でも特に体が小さい犬、例えば1kg以下のヨーキーやチワワ、2kg以下のマルチーズ、3kg以下のシー・ズーなどは、出産が難しいことが多いので、よく考えてから交配するようにしましょう。犬種ごとの標準体型などの情報は、本やインターネットなどで調べることができるので、参考にするとよいでしょう。


【 ⑤遺伝性疾患や血縁関係を調べる 】

万が一、生まれつきの病気がある子でも、適切なケアと愛情を注いであげることで幸せな生活をさせてあげることはできます。しかし、遺伝的疾患の可能性がある犬を繁殖にすると、同じ病気の子犬が生まれてしまう可能性もあるので、獣医師とよく相談をしてから交配をするかどうか決めましょう。ダックス・フンドやシェルティ、プ-ドルなどは、両親の毛色の組み合わせによっては病気などが出たり、犬種のスタンダードとかけ離れた毛色の子が生まれてしまうこともあるので、事前に確認をしましょう。

また、犬の血統証は3代くらい前の世代の毛色などを確認することができるので、血縁関係が近すぎないかどうかも確認しておくとよいでしょう。他の動物と同様に血縁関係が近すぎると、生まれつきの異常が出やすくなってしまうので、繁殖は避けるようにします。


【 ⑥健康状態を確認する 】

出産に耐えられないような異常はないか、子犬に適切な免疫が受け継がれるように過去1年以内に混合ワクチンを済ませてあるかなど、母犬の健康状態を動物病院できちんと確認しましょう。子犬に移らないようにノミ・ダニの予防もしておくとよいでしょう。


補足として以下にあげる犬種は難産になりやすいので、より注意が必要です。

ほとんどが帝王切開になる犬種…ブルドッグ、ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグ、パグなど。

特にブルドッグは、周産期の異常(浮腫など)が多く、子犬と母犬ともに死亡率の高いことが知られ、一般の飼い主さんには繁殖が難しい犬種といわれています。

難産、帝王切開の多い犬種…マルチーズ、シー・ズー、チワワ、ダックス・フンド、ヨークシャー・テリア、プードル、ポメラニアンなど。

小型犬は、難産となる可能性が高いとお伝えしましたが、特に頭部の大きいトイ犬種は難産になりやすいようです。また、人気の高いミニチュア・ダックスフンドも妊娠頭数が多く、途中で母親が体力を失ってしまうなどの理由で帝王切開に踏み切ることが多くあります。また日頃から運動不足で肥満の場合は、難産の可能性が高くなることを覚えておきましょう。


おわりに

今回は、繁殖前のチェックポイントをあげてみました。愛犬を繁殖する場合は、これらのポイントをきちんと踏まえて、愛犬の妊娠・出産へ向けて正しく勉強をした上で、子犬をできるだけ安全に産ませることができるように準備をしましょう。

万が一、出産に無理があると思う場合は、子供を産ませない選択をして避妊手術を行うことも大切です。