犬は長年にわたる品種改良の結果、手のひらに乗るほどに小さな犬種から人よりも大きくなる犬種までさまざまな種類がつくられました。そのなかでも、皆さんは大型犬というとどんなイメージを思い浮かべますか? 強そう、やさしそう、それとも怖そう? 大きな犬の種類はたくさんありますが、今回は特に大きな超大型犬についてお話をします。
一番大きな犬ってどのくらい?
世界でもっとも体重のある犬としてよく知られているのはセント・バーナードです。雪山で人命救助を行う犬として作られ、大きな子では体重が90kg近くあります。
また、もっとも背の高い、体高(地面から肩の高さまで)のある犬はアイリッシュ・ウルフハウンドといわれています。体重は50kgくらいですが、体高は80cmもあり、うしろ足で立ち上がると軽々と私たちの背丈を越えてしまいます。
超大型犬がつくられた理由
大きな犬たちは、それぞれ目的があって大きくなるように作られてきました。たとえば、セント・バーナードやニューファンドランドなどは人命救助の目的で作られ、雪山で倒れた人や溺れた人を引っ張ることができるように、がっしりとした体格が求められました。
また、アイリッシュ・ウルフハウンドやボルゾイなどは、オオカミ用の猟犬としてオオカミに負けない体格と脚力を身に付けるために長い足が求められました。
そのほか、山岳の牧羊犬として体力が求められたために大きくなったグレート・ピレニーズやバーニーズ・マウンテンドッグ、「フランダースの犬」として知られるブービエ・デ・フランダースは、酪農家の力仕事を手伝うために大きく作られました。
さらに、グレート・デーンやマスチフなどは、番犬や権力の象徴として筋肉が隆々とした、威圧するような体格が求められました。
超大型犬の特徴
このような大きな犬種には、通常の犬と少し違っているところがあります。
まず、成長が非常に早く急激であるということです。生まれたときは、ほかの犬種と同じように手のひらサイズの赤ちゃんでも、生後4ヶ月頃にはすでに10kg以上になることがあります。そのため、成長期の栄養コントロールが非常に難しく、重要です。
2つ目は、急速に老いていくということです。寿命は小型犬に比べて短く、12~13歳といわれており、7歳になるころにはすでに老齢期に入ります。足腰や心臓、消化器官などが弱ってきたら、人と同じような介護が必要となることもあります。
超大型犬を飼うには
大きな犬種は、体の割に性格もおだやかで、動きも優雅な子が多いため、一度は飼ってみたいと思われる方もたくさんいらっしゃると思います。でも、大きな犬を家族として迎えるためには、知っておかなければならないことがいくつかあります。
1. 経費と手間
まず、大きな犬種を飼う場合は、お金と時間がかかることを覚悟しましょう。食費だけでもほかの犬種の何倍も必要ですし、フィラリア予防薬やちょっとした治療薬なども、何倍ものお金がかかります。また、当然広い生活空間が必要となりますが、暑さや湿気が苦手な子が多いので、エアコンは欠かせません。そして、健康の維持には毛のお手入れや目や耳などの普段のグルーミングにもきちんと時間がとれなければなりません。
2. しつけ
大きな犬種は、おっとりした性格の子が多いのですが、それでも子どものころからきちんとしつけをしておかないと、大きく成長したころには人間の力でコントロールできなくなり、言うことを聞かせるのが難しくなってしまいます。もし、しつけに失敗して人を威嚇するような子になってしまったら、他の犬や人を避けて生活させないと思わぬ事故にもつながりかねません。。常に人間がリーダーであることを確認させるように、フセやマテなどの基本動作やクレート・トレーニングなどは毎日行うようにしましょう。
3. かかりやすい病気
大型犬にも多く見られますが、超大型犬も股関節形成不全症という、うしろ足と骨盤の間の関節が変形してしまう病気が遺伝性疾患としてよくみられます。もともと体重が重い子たちなので、成長期から激しい運動をさせると悪化してしまうことがあります。
また、胸が大きくて深い子は胃捻転を起こしやすいともいわれています。食後すぐに運動をすることによって発症するともいわれているため、食後数時間は静かに過ごさせなければなりません。
さらに、遺伝的要因が強い病気として拡張型心筋症と呼ばれる心臓病があります。これは、心臓の筋肉がうまく働かなくなるため、ちょっとした運動でも息切れするようになったり、突然心臓が止まって死んでしまう怖い病気です。
おわりに
犬を飼ったことがある方でも、超大型犬を飼うということは体力面、金銭面、しつけなどで異なる点がたくさんあるため、家族に迎える際には実際のお世話を入念にイメージし、覚悟をもって家族に迎えなければなりません。けれどその反面、超大型犬には他の犬種にはない
魅力がたくさんあります。「いつかは超大型犬を飼ってみたい」と思っている方は、お散歩中の超大型犬に会ったときに飼い主さんに話を聞いてみたり、具体的なイメージを膨らませて、自分の生活とマッチするかどうかよく検討してみましょう。
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