犬の痙攣(けいれん)について

けいれんとは、自分の意識と関係なく体の一部や全身の筋肉がガクガクと動いてしまう症状のことを言います。もし愛犬が突然目の前でそうなってしまったら、誰でもビックリしてしまいますよね。でも、こんなときこそ冷静な対応が必要となります。今回は、愛犬がけいれんを起こしたときに冷静な対応ができるよう、その原因や初期対応について解説します。


けいれんはどんなときに起こる?

けいれんは、神経が自分でうまくコントロールできなくなってしまうときに起こります。

顔など体の一部の神経だけに起こることもありますが、犬では脳の神経に障害が起き、意識を失って全身の筋肉が収縮してしまうタイプが多く見られます。


けいれんの原因

犬がけいれんを起こしたときには、まず原因を見極める事がとても大切です。

【脳の病気】 

トキソプラズマ症・・・脳の中に寄生虫が入り込んでしまう病気

犬ジステンパー・・・脳にウイルスが感染する病気

クリプトコッカス症・・・脳に真菌の一種が感染する病気

水頭症・・・頭蓋骨の中の脳脊髄液が溜まりすぎて脳が物理的に圧迫される病気

脳腫瘍・・・脳の中に腫瘍ができてしまう病気

脳の外傷・・・交通事故や高所落下などで脳が直接ダメージを受けた場合


【体に毒素が溜まって神経が侵される病気】 

腎不全・・・体の毒素を排泄する腎臓の機能が弱ってしまう病気

門脈シャント・・・先天的な血管走行の異常のため、毒素が体内をぐるぐる回りつづける病気


【その他】

てんかん・・・原因は不明

熱中症・・・体全体が高温となってしまう状態

低血糖・・・子犬が下痢をしたときや、膵臓の腫瘍のときなど、脳のエネルギーとなる血糖が低下するためにけいれんが起こる

中毒・・・農薬や重金属、有害植物などを口にすることによってけいれんが起こる


けいれんが起きてしまったら

今まで元気で何の病気もなかったのに、突然手足を突っ張ってけいれんを起こした場合は、てんかんの可能性が非常に高いといえます。

てんかんのけいれんであれば、すぐにおさまるので、あわてずに行動しましょう。

まず、ペットの回りにある、ぶつかりそうなものをすばやく片付けます。片付けられない場合はぶつけても怪我をしないように、クッションなどを間に挟むようにしましょう。特に頭の周りには物がないように気をつけましょう。

けいれんを起こしている時の犬は自覚症状がありません。たとえ、飼い主さんであっても、口の近くに手があれば激しく噛み付いてくることもあります。意識がないので一度噛み付いたものは離そうとしません。可能であれば大きめのタオルや毛布などですっぽりとくるんでしまってもよいのですが、決して無理はしないようにしましょう。かえって興奮するようなら、押さえつけたり触ったりしないようにしましょう。

てんかんの発作は、通常数十秒から数分でおさまります。おさまったあとはいつものように戻りますが、本人は何があったかを理解していないので、静かに声を掛けながら、ゆっくりと落ち着かせてあげましょう。

もし、数分経ってもけいれんが収まらないようであれば、てんかん以外の原因が考えられます。しっかりと毛布に包んだまま緊急で動物病院に連れて行きましょう。


必ず動物病院へ

けいれんは脳の神経細胞にダメージを与えるため、何度も繰り返すと次のけいれんをひきおこす要因となってしまいます。けいれんがみられたら、たとえ一回でもまずは動物病院に連れて行きましょう。

その際、獣医師には「いつ」「どんなときに」「どのくらいの長さのけいれんがおきたか」を話せるようにしておきましょう。

また、けいれんを起こしているときにはどんな症状だったか(手足を硬く突っ張っていた、舌の色が変わっていた、目がぐるぐると動いていた、など)を伝えるため、スマートフォンなどで動画を撮影しておきましょう。撮影が難しい場合は様子をよく観察して獣医師に伝えると、診断や治療の重要な手がかりとなることがあります。


けいれんの前兆

けいれいんの場合、発症前にいつもとちょっと違う仕草がみられることがあります。たとえば、落ち着きなくそわそわと歩き回る、口をくちゃくちゃさせる、急に吠える、などです。

また、何かがきっかけでけいれんが起きることがあります。たとえば、大きな音やフラッシュの光、来客時のチャイムなど、本人にとってストレスとなることが要因になることが多いようです。そのため、精神的に平静でいられる生活がけいれんの予防となることもあります。

けいれんの現場を獣医師が見ることができるのは非常にまれです。多くの場合、けいれんが収まってから動物病院に連れて行くため、飼い主さんの状況説明をもとにして、獣医師は原因を追求していきます。早いうちに正しい診断を下し、適切な治療を行なえば、けいれんを何度も起こすことなく、元気な生活を送ることもできるため、日頃から愛犬の様子を細かく観察し、いざというときにも冷静でいられるようにしておきましょう。