猫のストレスについて考えてみよう

「猫は寝てばかりいて、ストレスなんてないだろうな」

そう思ったことはありませんか?
猫だって当然ストレスはあります。でも、実は猫はとっても前向きな動物なんです。
今回は、猫の気持ちになって上手なストレス解消法を考えてみましょう。


室内の猫にとってのストレスとは?

ずっと外で暮らしていた猫を家族に迎えたとします。最初の数週間は外をじっと眺めたり、ドアの近くでニャーニャー鳴くことがあるかもしれません。
「いつでもご飯を食べられて、外敵のいない安全な家の中で暮らすこと」は、この子にとって最初はストレスになってしまいます。しかし、猫は人間が思うよりもずっと柔軟で前向きな思考回路の持ち主だと言われています。すぐに状況を飲み込む猫もいるかもしれませんが、時間がかかっても必ずその環境を受け入れてくれます。

つまり、「自由を奪われた」という気持ちになるのではなく、外出を諦め室内を受け入れるのです。室内を受け入れてくれれば、外に出られないことをストレスと感じなくなるでしょう。


室内飼いはかわいそう?

昔は猫は家と外を自由に行き来するのが普通だったので、家の中に閉じ込めるのはかわいそうだという方もいるかもしれません。しかし、外敵の多い室外では、ノミ・マダニ、猫同士のケンカによる外傷および咬傷に伴うウイルス感染など、室内とは違って予測のつかない病気になってしまう可能性が大いにあります。なので今は「完全室内飼い」が良いとされています。

初めから完全室内飼育をしていれば、その子にとってはそれが普通であり、家の中だけがその子の世界になります。ですので、室内にいることは「閉じ込められている」という感覚にならないため、ストレスと感じる原因にはならないでしょう。


ストレスを感じるのはどんな時?

愛猫が室内を全力疾走したり、網戸や壁を天井までよじ登る状況になったことはありますか?それを見て、「ストレスが溜まっているのかも」と不安になってしまうかもしれませんが、必ずしもそう思うことはありません。猫は走りたいから走り、登りたいから登るのです。しかし、この行動を𠮟りつけたり制限するようなことをしてしまうとストレスになってしまうため注意してください。

猫のストレスサインは主に下記のようなことが挙げられます。

①食欲が落ちる

②トイレを失敗する

③若いのに寝てばかりいる

④過度なグルーミング

⑤下痢もしくは便秘

⑥嘔吐


このような行動が見られたら、猫がストレスに感じる要因がないかどうか確認しましょう。
猫がストレスを感じる主な要因としては、


①生活習慣が大きく変わった

外壁工事や近隣の道路工事の騒音、飼い主のライフスタイルの変化など。

②同居家族(動物)の変化
新しく家族が増えたり、家族との別れがあったなど。

③来客
家族以外の人間に慣れていない子にとって、来客はストレスとなることがあります。

④引っ越し
引っ越し時の移動や新しい家での生活はストレスとなりやすいです。

⑤猫にかまいすぎている
四六時中人間にかまわれていたりして一人になれる時間や場所がないとストレスになることがあります。また、大きな声や高い声を好まない猫が多いため、直接触っていなくても近くで騒いだり歓声をあげることはやめましょう。


猫にとっての快適な環境とは?

猫がいくら狭い場所が好きでかまわれすぎるのがストレスになるからと言っても、狭いケージの中でじっとしていることは健康的とは言えません。室内という限られた空間の中で、できるだけ楽しく満足できる生活をさせてあげたいですよね。

そのために、家具や道具などの置き方を調整して、ジャングルジムを作ってあげましょう。猫は3次元での行動を好みます。つまり、横移動だけでなく、昇ったり降りたりの縦移動が大好きなのです。

キャットタワーを設置したり、寝床を高い所に作ってあげたりするだけでも、きっと室内が楽しくなるでしょう。


爪とぎはストレス解消?

猫にとって爪研ぎはとても自然で大切な行為です。

爪痕を残すだけでなく、肉球の臭い腺から分泌される個特有の臭いをつけることによって自分のテリトリーを主張しています。それは、自分の爪痕や匂いの残る範囲を作ることで安心できるスペースを確保することだといえます。

また、前足の爪は、猫が身を守るための大切な武器でもあります。猫の爪は、古くなると剥がれ落ちていきますが、爪とぎによってその古い爪を剥がし、爪をシャープに保つことができるのです。そのため、「猫がいろんなところで爪とぎをしている=ストレス発散しようとしている」と考える必要はありません。むしろ爪とぎができなかったり爪とぎを怒られることのほうがストレスになるので、いろんな場所で爪とぎができるようにしてあげましょう。


グルーミングとストレスの関係

猫は、食後や寝起きあるいはリラックスした時によくグルーミングをします。おそらくその行為自体、猫自身に満足感を与えているのでしょう。

反対に、不安な時やイライラしている時にも必死にグルーミングをします。特に、突然のできごとに驚いたり、狙った獲物に逃走された場合など、感情のコントロールがうまくいかない時にも猫は必死にグルーミングすると言われています。猫の立場からすると、「気持ちを紛らわす」ための行動であるといえるでしょう。

2つの行動の選択を迫られ決断しきれない状況において、動物が全く関係のない行動を選択することを動物行動学的に「転位行動」と呼びます。犬でも同様に緊張や不満があるとあくびをしたり体を掻いたり目を反らしたりする行動をします。ですので、猫は「転位行動」としてグルーミングをしているとも考えられます。


マタタビでストレス解消

マタタビ(学名:Actinidia polygama)とは、山地に自生する蔓性落葉低木(ツルで他の木に巻きつく植物)です。昔から人も漢方薬として利用してきたことで有名です。利尿作用や血行促進、強壮作用があると言われており、痛風や神経痛リウマチにも効果があるようです。また、マタタビの花は山菜としておひたしや炒め物に、又茎や葉は乾燥させ入浴剤としても利用されてきました。

猫にマタタビを与えると興奮し独特の反応を示します。その反応はさまざまですが、一種の陶酔状態を起こし、いずれも興奮します。

また、マタタビは猫にとっての万病の薬としても知られており、元気が無く食欲も無いときなどにマタタビを与えると元気になるといわれています。

ですので、イライラしていていたり、言う事を聞かない時、また、元気がない時や食欲がない時など上手に利用してみるといいでしょう。

個体差はありますが、雌よりも雄の方が反応しやすいといわれています。また、子猫や子ライオンなどは興味を示さないことが分かっています。

去勢手術を受けた猫の一部もあまり興味を示さないので、ある程度成熟した猫に対しての媚薬効果だと言えます。また、何の反応を示さない猫もいます。

多量に与えると呼吸麻痺を起こして死亡することもあるといわれているので、「反応がないから」「喜んで食べるから」「反応が面白いから」とあげすぎないよう、様子を見ながら少しずつ与えましょう。


おわりに

愛猫がゴロゴロとすり寄ってきたり、ゴロンと横になったり、気ままにくつろぐ姿をみて癒されていることと思います。そんな癒しを与えてくれる愛猫に少しでも幸せな気持ちになってもらえるように、快適な空間作りを工夫していきましょう!


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