「喘息(ぜんそく)」という言葉は人の病名でもあり、中にはよく知っている人もいるのではないでしょうか。その人間と同じ空間で生活しているペットたちにもこの喘息という病気があり、犬より猫の方が圧倒的に多いといわれています。今回はペットと人間の共通の病気である「喘息」についてお話します。
『猫喘息』ってどんな病気?
猫喘息とは猫のアレルギー性呼吸器疾患の一つです。もし飼っている猫がなんの前触れもなく急に立ち止まり、まるで何かを吐きたそうな感じで咳をした時は、猫喘息を疑う必要があるかもしれません。喘息の特徴的な症状はこの「発作」といわれている、嘔吐をするような体勢で背中を丸めて『ゼー、ゼー』と、とても苦しそうな呼吸や咳をすることですが、そのときに酸素不足によるチアノーゼ(舌などの粘膜が紫色に見える状態)がおこる場合もあります。
発作は常に突然始まるため、飼い主さんは何が起こったのかと戸惑うことも多く、中には「吐き気がある」と病院に連れて来られる場合もあります。しかし、その発作がおさまるとケロッとして、まるで何事もなかったかのようにいつもと同じ状態に戻ります。
この猫喘息はシャム猫に多いという報告がありますが、原因がアレルギーに関係することを考えると、どの猫にも起こりうると言えるでしょう。
猫喘息は完治が難しい病気
猫喘息はアレルギーに関係する病気なので、アレルゲンを特定しそれをなくすことが一番の治療方法となります。しかし、人間同様、喘息を起こすアレルゲンは一つであることは少なく、猫の分野においてその原因をすべて見つけ出してそれを完全に排除し、病気を治すということは、人間の治療以上に難しいことでしょう。
この病気は、診断を予測するのは比較的簡単ですが、過去に肺炎などの呼吸器疾患にかかった経験のある猫に多く発生する傾向があり、飼育環境やその猫の体質によって症状や治療法がそれぞれ異なるため、完治は難しいと言われています。よって猫喘息であるという確定診断をしたあとは、その猫に合った持続的な治療により再発を防ぐことが最も重要になります。
飼い主さんができること
猫喘息の発作中、とてもつらそうな咳をします。では、そのような症状を起こさないために飼い主さんができることはなんでしょうか?
第一に、考えられる基本的な原因をなくすための環境対策がとても大事になります。
前述したように猫喘息の原因となるアレルゲンを特定することは非常に難しいので、アレルギーが起こりやすい刺激物をできるだけ取り除き、発症の緩和を目指しましょう。
・こまめな掃除や洗濯をし、塵やホコリ、ダニの発生を抑える
・絨毯や布団の掃除をおこない、常に清潔に保つ(掃除の際、猫は別部屋に)
・空気清浄機を使用し、ハウスダストを除去する
・除湿機を使用し、カビの発生を防ぐ
・タバコを吸わない
・芳香剤、香水、消臭剤などの使用や噴射式のスプレーは使用を控える
・トイレの猫砂は粉が舞い散らないタイプのものにする
・ブラッシングなどで猫の皮膚や被毛を清潔に保つ
・外に出さないようにする
また、日頃の経過観察も大事です。喘息が起きた時の直前の状況や場所をよく覚えておくことで、再び同じ状況になった時に喘息が起こるかもしれない危険なサインとして注意することができます。それにより自然とアレルゲンが特定でき、発作を防ぐことが出来るようになることもあります。
さらに、動物病院で定期的な健康診断や予防接種をすることで呼吸器疾患の発症を予防し、猫喘息の再発を防ぐことも大切です。
治療を続けることが大事
飼い主さんができる環境対策以外の治療法として、獣医師から処方されたお薬を確実に飲ませることや、外出させないこと、状態によっては安静を保つことなどが重要になります。
処方されるお薬はアレルギーに対するステロイド剤や抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤などが主で、さらに酸素吸入やネブライザー療法(噴霧療法)を使用することもあります。しかし、これらは呼吸を楽にするためのものであり、喘息を完治させるものではありません。
さらに、猫喘息になってしまった猫はアレルギー体質であることが多く、その体質はすぐに改善するものではないため、普段喘息の症状がみられず元気であっても、いつ再発するかわからない状態だということを認識しておきましょう。
よって最終的には、『治す』というより『いつも正常に近い呼吸を維持してあげる』ことが目標になります。そのため調子がいいからといって途中で治療や予防をやめてしまうと再発する可能性が高いため、猫喘息は生涯治療が必要な病気として理解しておきましょう。
おわりに
「猫喘息は治らない病気」と聞くと、落ち込んだり悲観的になる飼い主さんもいるかもしれません。でも、悲しむよりも愛猫に対して自分ができることをしてあげることで、多少なりとも改善に向かい、楽になれるでしょう。飼い主さんのやさしさは、ペットの健康にとても大きくかかわっているのです。
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