人間ではドロドロの血液や動脈硬化の原因としてよく知られているコレステロールですが、犬の間でも関係する病気はいくつもあります。そんなに脂っぽいものをあげているわけではないのに愛犬のコレステロールが高かったら…なんて不安に思う方もいらっしゃると思います。今回は、犬とコレステロールの意外な関係をお話します。
コレステロールとは
コレステロールとは脂質の1種で、身体にとって必要な栄養の1つです。身体の中でつくられ、食べ物からも取り入れます。
コレステロールの働きは主に次の通りです。
・細胞膜、生体膜の材料
・性ホルモン、副腎皮質ホルモンの材料
・胆汁酸の材料
コレステロールの摂り過ぎは、人間の場合は動脈硬化など生活習慣病の原因のひとつになってしまいます。犬の場合は、動脈硬化になることは人間に比べて少ないようですが、注意する必要はあります。反対にコレステロールが不足すると、細胞膜が障害されやすくなるなどの問題につながります。大切なのは、多すぎず少なすぎず適切な量を摂取するということです。
善玉コレステロールと悪玉コレステロール
コレステロールには善玉コレステロールと悪玉コレステロールと呼ばれるものがあります。
少し難しい話になりますが、善玉コレステロールは「HDL」というリポタンパクに、悪玉コレステロールは「LDL」というリポタンパクに包まれているコレステロールです。
善玉「HDL」には全身の細胞で余ったコレステロールを回収して肝臓に運ぶ機能があります。一方、悪玉「LDL」には肝臓からコレステロールを全身の各細胞に運ぶ機能があります。
両方とも身体には大切な役割をしています。しかし「LDL」が多いと、全身にコレステロールがたまってしまい動脈硬化などを引き起こします。そのため悪玉と呼ばれ、「HDL」はたまってしまったコレステロールを運び出すので善玉と呼ばれるのです。
コレステロールと中性脂肪の違いとは?
コレステロールと中性脂肪は両方とも脂質の1種ですが、以下のような違いがあります。
コレステロールは体内の構造脂質です。細胞膜、性ホルモン、副腎皮質ホルモン、胆汁酸の材料として重要な役割をもっています。中性脂肪は貯蔵脂質です。エネルギー源になる、体温を保つ、衝撃から内臓を守るなど重要な役割をもっています。
中性脂肪は体脂肪の元です。つまり中性脂肪が蓄積されると体脂肪になるので、中性脂肪のためこみすぎが肥満へとつながります。
ドロドロ血液からサラサラ血液へ
ドロドロ血液の原因にはコレステロールや中性脂肪の過剰があります。コレステロールや中性脂肪の不足も病気の原因といえますが、現代では過剰な摂取のトラブルが多いと考えられます。
サラサラ血液への1番の近道は、食生活の見直しと適度な運動です。
コレステロールを上げる原因とは?
・食べ過ぎ
・コレステロールや飽和脂肪酸を多く含んだ食品の摂り過ぎ
・食物繊維の摂取不足
・肥満(体に必要以上の脂肪がたまっている状態)
・運動不足
・ストレス
・遺伝や体質
・他ほかの病気
コレステロールを増やさないための食事管理とは?
コレステロールを増やさないためには、動物性脂肪(飽和脂肪酸)や甘いものの摂り過ぎを控えることが有効です。植物性脂肪(不飽和脂肪酸)、青魚、植物繊維を摂ることを心がけましょう。
例えば…
≪コレステロールを増やす食品≫
牛肉、豚肉の脂身、バターを多く含む洋菓子、チーズ、アイスクリーム、卵など
≪コレステロールを減らす食品≫
魚、大豆、ゴマ、野菜、海草、植物油など
健康な栄養素のバランスを考えると、犬に手作りごはんをあげるのは非常に大変です。栄養素の勉強をして手作りごはんを作るという時間が取れなければ、良質なドックフードをあげることが栄養素のバランスからして1番無難なのかもしれません。
コレステロール値が高い場合に疑う病気とは?
コレステロール値を知るには、血液検査をする必要があります。その値が高いということを「高脂血症」といいます。人間では高脂血症は動脈硬化や心筋梗塞の原因となりますが、犬ではまれな病気です。
疑う病気は…
・糖尿病
・蛋白喪失性腎症
・副腎皮質機能亢進症
・甲状腺機能低下症
・胆管閉鎖 があげられます。
おわりに
コレステロールの摂り過ぎは、生活習慣病の原因の1つです。それは、その食べ物をつまみ食いしている犬にも同じことがいえます。しかし、犬にはバランスのとれたフードがあるので、摂り過ぎの問題よりもほかの病気によってコレステロール値が上がってしまう方が問題だといえるでしょう。
コレステロールが気になる飼い主さんは、動物病院での健康診断と一緒に定期的な血液検査をして、病気の早期発見につなげていくとよいでしょう。
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