“リス”という言葉を聞くと、木の実を食べているあの愛らしい姿をだれもが思い出すでしょう。その愛らしい姿はみなさんよくご存知かと思いますが、詳しい生態や飼い方などは実はあまり知られていないのではないでしょうか。今回は、そんなリスの知られざる魅力に迫ってみましょう。
多種の仲間がいる“リス”
リスの種類はとても多く、シマリスやエゾリスをはじめ、タイワンリス、ミケリス、さらには空中を自由に滑降するモモンガやムササビ、水辺にいるビーバー、草原で生活するプレーリードッグなどもリスの仲間です。これらの中では樹の上で生活する種類と、地上に住む種類の2つのグループに分けることができます。樹上性のリスはフサフサのしっぽを持ち、基本的に単独行動で過ごすため、なわばりを持つケースは少なく、一生のほとんどを樹の上で生活します。一方、地上で生活するリスは尾が短く草食性であることが特徴で、家族を中心とした集団行動をとり、なわばりを持っているケースが多くみられます。
日本でペットとして一般的に飼育されているのは「シマリス」という種類のリスなので、ここからはシマリスの所属する樹上性のリスについてのことを中心にお話していきます。
基本的なリスのこと
リスは、ネズミやハムスターと同じくげっ歯類の動物です。昼行性の動物で、周りが明るいときに元気に活動し、夜は巣穴で眠ります。食べ物が豊富にあるときには、貯食といって種や木の実を人目のつかないところに埋めたり隠したりする習性があり、その際には口の中の頬袋に食べ物を入れて運びます。さらに、寒くなって食べ物がなくなると冬眠をして冬を乗り切りますが、気温が低くならなければ一年を通じて活動します。ペットとして飼育している場合の寿命は6~10年前後ですが、飼育方法が適していれば10年以上生きることもあります。
リスの体について
木登りに適した前足の指は短く4本で、ジャンプ力のある後ろ足の指は長く5本あります。歯の数は全部で22本あり、切歯と呼ばれる前歯は一生延び続けます。エサを運ぶのに便利な頬袋はドングリが左右に3つずつ、合計6つも入るほどの大きさに広げることができ、嗅覚や聴覚もとても優れています。ヒゲは大切な感覚器官なので切らないようにしましょう。
また、シマリスの特徴でもある背中の縞は5本あり、被毛は夏と冬に生え変わります。
樹の上で生活することが多いリスにとって、しっぽはバランスをとるために重要なものですが、敵に捕まえられそうになった時に逃げることができるよう、とても切れやすくなっています。そのためペットのリスでも、絶対にしっぽをつかんではいけません。
鳴き声でわかるリスの気持ち
リスの鳴き声を聞いたことがありますか?
犬や猫と同じように、リスにも何種類かの鳴き声があります。春の発情期には異性を呼ぶ「ホロ、ホロ」「ピヨ、ピヨ」という鳴き声が、オスからもメスからも同じように聞くことができます。また、何か異常を感じたり警戒している時には「キュル、キュル」というかん高い声を、威嚇している時には短く「グルルルル」「ククククク」というような鳴き声を出し、その時に無理にかまうと噛みつかれたり引っ掻かれたりする可能性があります。飼育する時には、鳴き声で自分の感情を表現しているリスの気持ちをよく考えてあげましょう。
飼う際に気をつけたいこと
リスを飼う時は、ストレスがかからない居心地のいい環境にすることを第1に考えます。
そのためには、彼らの野性下での暮らしぶりをヒントにするとよいでしょう。
・ケージ:樹上と地上の両方を生活の場所としているので、ケージは高さと底面積が十分にあり、上下運動ができることがポイントになります。体は小さな動物ですがとても活発なので、最低でも幅・奥行き・高さとも、50cm以上はある広いケージを選びましょう。
・敷材:リスは樹木や地中に巣穴を作って生活するため、飼育下でも巣箱や床に敷く敷材が必要です。十分乾燥した、清潔なウッドチップや乾牧草などを選びましょう。
・トイレ:トイレの砂は、固まるタイプを選ぶと口に入れてしまったときにトラブルの原因にもなりかねません。安全に考慮して、固まらないタイプの方がよいでしょう。
・複数飼育の場合:リスは基本的に単独生活をするので、複数のリスを一緒のケージで飼っていると、成長に伴い重症になるほどのケンカをしてしまうことがあります。ストレスを感じさせないためにも、複数で飼う場合はケージを別々にしてあげてください。
・暑さや寒さの対策:温度管理には特に気を配りましょう。ケージの近くに温度計を置き、常に確認することを心掛けます。夏は風通しのよい場所や冷却シートを使用し、直射日光の当たらない場所へケージを置きましょう。冬はエアコンでの暖房をメインにし、パネルヒーターを使う時は、リスが自分でも温度管理ができるように「逃げ場所」を作ってあげることを忘れずにしましょう。
・冬眠はさせない:冬眠は健康状態によっては危険になることも多いため、飼育下ではリスのいる室内温度は20℃を下回らないように保ち、冬眠はさせないようにしましょう。
ごはんについて
野性のシマリスは、木や草の種子を主として食べています。最近はリス専用の配合フードも売られていますが、もしなければ穀物種子が入っている小鳥用の配合飼料やハムスター用のペレットなどで代用できます。ただし、ヒマワリの種は脂肪分が多く、食べすぎると病気や肥満を引き起こす可能性があるため、量を考えてあげすぎないようにしましょう。
その他、主食以外のごはんとしては、野菜や果物、動物性タンパク質をバランスよく与えます。野菜や果物は、与える前によく洗いましょう。動物性タンパク質としてペット用の煮干しやチーズのほかに、生きているミルワームやコオロギなどは「生きている虫が食べたい」という欲求を満たすことができます。抵抗があるようなら缶詰を利用してもよいでしょう。
また、リスは昼行性の動物のため夕方を過ぎると寝てしまうので、夕方以降におやつを与える必要はありません。もしも与える時には主食をしっかり食べたのを確認してから与えるとよいでしょう。
おわりに
リスは本来野生動物です。ペットとして飼われるために捕獲されて数が減少すると、自然の生態系が変化してしまいます。また本来の生息地ではない場所に逃がしてしまったり、何らかの理由で飼えないからといって捨ててしまい、外国産のリスを帰化させてしまうことも、生態系に重大な問題を起こす可能性があります。
そのため、リスを飼うということは自然の生態系に間接的に関わっていることをしっかりと認識し、安易な気持ちで飼わずに最後まで責任を持って飼育することを心がけましょう。
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