ストレスが原因だと思われやすい犬の脱毛症ですが、他にも様々な原因があります。
今回は、“脱毛”が症状の病気について、詳しくお話します。
犬の毛の仕組み
犬の毛は、皮膚の一部が深く窪んだ「毛包」という場所で作られています。毛包の周囲は「真皮」と呼ばれるコラーゲン繊維と水分などで構成されていて、毛包の根元で、特殊な細胞がさかんに活動して新しい毛を作り、上へ上へと伸ばしています。
毛は周期的に構造が変化していて、活動が止まる時期(休止期)になると、毛の根元が丸くなって自然と抜け落ちます。そして、しばらくするとまた新しい毛が作られ始めます。
脱毛を起こす皮膚病
では、“脱毛”の症状がある、代表的な犬の病気についてご説明します。
【膿皮症(のうひしょう)】
主にブドウ球菌が原因です。毛包に細菌が侵入すると、毛包が破壊され徐々に脱毛と痒みの症状が発症します。
【疥癬症(かいせんしょう)】
疥癬(かいせん)という、目に見えないくらいの小さなダニによる感染症です。すでに疥癬に感染している動物によって感染します。ダニは、皮膚にもぐって移動しますが、その糞などの排泄物に対して体が激しく炎症反応を起こすことで、フケ・痒み・脱毛を引き起こします。
【ニキビダニ症】
ニキビダニという、目に見えないくらいの小さなダニが、ほとんどの犬の毛包に常在しています。しかし、様々な要因により過剰に増殖し皮膚炎を引き起こします。
【真菌症(しんきんしょう)】
カビによる皮膚病です。皮膚糸状菌という、人間の水虫を引き起こすものと同じ種類の真菌で、皮膚の角質や毛などに含まれるケラチンという成分を栄養に生息しています。
皮膚糸状菌が毛に侵入すると毛がもろくなり、千切れるようになります。実際に毛が抜けているわけではないですが、脱毛症のように見えます。
【ノミアレルギー】
ノミに何度か刺されると、ノミに対してアレルギーを持ってしまうことがあります。
ノミアレルギーをもつ犬は、1匹のノミに刺されただけでも激しい痒みを引き起こし、掻きむしることで脱毛します。
【アレルギー】
ノミ以外にもハウスダストや花粉、食餌などに対してアレルギーになってしまうと、それらの原因物質に触れたり、体内に取り込んだりすることでアレルギーの症状を引き起こします。著しい痒みが特徴的で痒がるうちに毛が擦れて切れてしまいます。
【内分泌疾患】
主に高齢犬に多く、副腎皮質機能亢進症や性ホルモン疾患など、ホルモン分泌の異常により引き起こされる病気です。比較的痒みは少なく、左右対称の脱毛が特徴です。毛を作る過程に様々なホルモンが関係しているため、そのバランスが崩れると多くの毛が休止期(活動を休んでいる状態)を迎えます。そのため、新しい毛の産生が衰え、脱毛症を引き起こします。
【腫瘍】
皮膚にできる腫瘍は、その部分の脱毛が多く見られます。
【肉芽腫性脂腺炎】
毛包の途中にある、皮脂を分泌する脂腺に免疫反応が起きることで、脂腺が破壊されると同時に、毛包も破壊されて脱毛してしまう、少し珍しい皮膚病です。
【黒色被毛脱毛症】
黒と他の色の斑点の毛色を持つ犬種(白黒や、黒と茶色などの毛色)で、黒い被毛部分だけ脱毛する皮膚病です。原因は、遺伝的なものと考えられています。
【カラーミュータント脱毛症】
黒色被毛脱毛症と似ていますが、この脱毛症の場合、脱毛の前に黒色被毛の淡色化が見られます。特に痒みなどはありません。
犬で脱毛を引き起こす皮膚病のうち、ほとんどが上記のどれかに当てはまります。検査してどの病気にも当てはまらない場合は、ストレスによるものが考えられます。
皮膚病になると
皮膚病になると、細菌や真菌(カビ)、寄生虫などの病原体が、毛包の周囲や中にまで侵入します。白血球などの炎症細胞も毛包の周囲にたくさん集まり、病原体と戦うために細胞の活動が行われます。
病原体そのもの、もしくは自分の炎症細胞の作った物質により、徐々に毛包の構造が壊されると、毛はまだ活動期なのにも関わらず毛包から抜けやすくなります。
まとめ
“脱毛”は、ストレス以外にもたくさんの原因が考えられます。適切な治療を行い、皮膚を良い状態に保つことができれば、状態の整った毛包から数週間で元のような毛が生えてきます。
愛犬の可愛さを保つために、皮膚のチェックは定期的に行いましょう。
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