今回は、犬の乗り物酔いについて考えてみましょう。
「状況に応じてどのように薬を使い分けたら良いか」
「どのようにしたら慣れさせることができるのか」
など…
これから飼い主さんに知ってほしい“乗り物酔い”について、
原因から対応策まで詳しくご説明します。
乗り物酔いの原因
犬の乗り物酔いは、人間と同じように心理的な影響も関与しているといわれています。
過去に車に乗って嘔吐した経験があると「車に乗る=気持ち悪くなり吐く」というイメージがつき、車に乗るのを嫌がることがあります。また、飼い主さんが無理に乗せようとして格闘した経験があると恐怖を感じ、乗車を拒否することもあります。さらに重症であれば、単に停まっている車に乗せるだけでも乗り物酔いの前兆である唾液分泌が引き起こされます。
車酔いをする犬の多くは、車に乗せられることが「楽しい遠足」であることよりも「動物病院に連れていかれて注射を打たれる、といった苦い記憶」にリンクしていることが多く、それが車酔いを助長させる要因の一つでもあります。スピード違反で捕まった前歴のあるドライバーが制限速度で走行していてもパトカーが後ろに付いたとたん「パトカー=罰金」という方程式が成立し、必要以上に減速する心理現象に似ているかもしれません。
犬や猫の乗り物酔いの最初の症状は、人間と同じく“めまい”や“よだれ(唾液分泌)”から始まり、最終的に吐き気や下痢へと発展します。
乗り物酔い対策とは
「小さな頃から色々な乗り物に乗り慣れていると、乗り物酔いになりにくい」という事実は人も動物も同じです。乗り物に慣れさせる方法を紹介しましょう。
まず停まっている車に乗せて車内で座ったり歩き回らせたりし、約10分後に車から出してください。これを1日2回、3~4週間継続してみます。これで犬が「車は危険ではない」と認識し、自ら車に乗るようになればファーストステップ完了です。
そして、次のステップは短時間のドライブに連れていくことです。注意すべき点は“よだれ”などの症状が出る前に停車させることです。停車後すぐに10分程度遊び、リラックスした時点で再び乗車させます。これを数日継続して、ドライブの距離を徐々に長くしていきます。
それでも改善されない場合は
これまでに紹介した方法でも改善しない場合は、犬でも「セルフメディケーション」が効果的な場合があります。
OTC薬(一般医薬品)として、薬局でも入手可能な人用の酔い止め薬の主成分は「抗ヒスタミン薬」や「副交感神経遮断薬」です。「抗ヒスタミン薬」は胃を落ち着かせ、脳から放出されるヒスタミンの刺激によって起こる嘔吐を抑える働きがあります。
また、「副交感神経遮断薬(臭化水素酸スコポラミン)」は自律神経の興奮を安定させる働きがあります。これらの成分は犬でも補助的な効果がある場合があり、動物病院でも処方することはあります。(ただし、個体差があることを覚えておく必要があります)
また、動物をおとなしくさせることを目的とした薬(睡眠薬や鎮静剤)もありますが、動物によっては効果が強く出る可能性や、逆に過剰に興奮するリスクがあります。例えば飛行機に犬を搭乗させる場合、通常客室内への持ち込みは認められておらず、専用ケージ(航空会社によってはバリケンネルなど持ち込みも可)に入れて動物専用の貨物室に入れられます。このような状況では直接監視が出来ず、副作用に気付かれないため、安易な薬の投与はおすすめできません。メディケーションは獣医師としっかり相談して判断しましょう。
民間療法の種類
「犬の乗り物酔い」に対する民間療法として、注目されているのが「ジンジャー(生姜)」です。
乗り物酔い・二日酔い・つわりなどの吐き気は、セロトニンという神経伝達物質が胃腸の筋肉を必要以上に収縮させることが原因で起こります。ジンゲロール(生姜の辛味成分)には抗セロトニン作用があり、吐き気を抑えることができます。
熱乾性ハーブの生姜は「万能薬」として有名で、生姜のかけらを噛むとどんな薬よりも乗り物酔いに効くといわれています。中国人の船乗りも、昔から船酔い予防にはショウガの根を噛んでいたといいます。生姜は風邪の予防に効くだけでなく、冷え症や血行促進、さらに消化を良くする働きもあります。
さらにペパーミントは、うつ状態をやわらげる効果や神経を鎮めてくれるだけではなく、人の酔い止めとしての効果も認められているといわれています。犬においても乗り物酔いだけでなく細菌を攻撃し、腹痛に対する薬効もあるのだとか。湿らせたティッシュにペパーミントを2~3滴垂らしてビニール袋に入れ、車酔いしそうなときには袋の中を嗅がせると良いかもしれません。ペットだけではなく、飼い主さん自身も実践する価値はあるので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
乗り物酔いへの対応策まとめ
1. 車に慣れさせる。(子犬の時期から止まっている車に乗せて、ニオイや空間に慣れさせる)
2. 車内のニオイに注意する。(動物は芳香剤やタバコの臭いに敏感です)
3. 犬の胃袋にフードが入っていると乗り物酔いを助長する可能性があるので、出発前には食事を与えない。
4. 「車に乗る=楽しい」を覚えさせる。
5. スライスした生姜にお湯をかけ、少量の蜂蜜を加え、冷やして犬に飲ませる。
6. 飼い主さんのドライビングテクニックを上達させる。(急発進・急ブレーキの中止、スローイン・ファーストアウトなど)
乗り物酔いを正しく認識し、正しく対応策をとって
愛犬とのドライブを存分に楽しみましょう。
0コメント