肉球のしくみ

愛犬や愛猫のどこが好き?と聞かれて「肉球!」と答える人はとても多いようです。

ぷにぷにとした感触、しっとりとした手触り、癒しを感じる独特のにおい、というのがその理由のようですが、それ以外にも、肉球は私たち人間が持っていない部分だからなのか、不思議な魅力を感じるのかもしれません。今回は肉球についての秘密を探ってみましょう。


肉球を持つ動物

肉球は主に陸上で生活する食肉目の動物の足裏に見られる、毛の生えていないプックリとした部分のことです。犬や猫の仲間のほかにも、クマの仲間、イタチの仲間などにも肉球があり、パンダは肉球で竹を握ることもできるそうです。動物園に行ったときには是非、それぞれの動物の肉球がどうなっているのか確認してみてくださいね。


肉球の正式名称

普段、一括りに肉球と呼んでいますが、愛犬や愛猫にある“ぷにぷに“の1つ1つに実は正式な名前があることを皆さんはご存知でしょうか。前足の真ん中にある一番大きな肉球を「掌球(しょうきゅう)」、それぞれの指のところについている5つの小さ目の肉球を「指球(しきゅう)」、さらにもう少し上の手首のところにあるちょっと細長くて固い肉球を「手根球(しゅこんきゅう)」といいます。同じように、後ろ足の肉球の一番大きな肉球を「足底球(そくていきゅう)」、指のところにある4つの小さな肉球を「趾球(しきゅう)」と言います。


肉球の構造

まだお母さんのおっぱいを飲んでいる頃の肉球は、本当に柔らかくてフニャフニャです。犬や猫が成長するにつれて自分で歩くようになり、外にも出かけるようになると徐々に固く弾力が出てくるようになります。そのため普段、外で生活をしている高齢の犬の肉球は固くなりすぎて、お正月が終った鏡餅のように固くひび割れています。このように、地面からの刺激を日々受けなければいけない肉球の皮膚は他の皮膚と少しその構造が異なります。表面が角質層で覆われているのは他の皮膚と同じですが、その層が非常に厚く、一番外側は人の爪のような固いケラチンで覆われているのです。そしてその下は脂肪を多く含んだ弾性繊維が網目状に重なっています。神経や血管はこの脂肪の中にあるため、裸足でも地面の熱さや冷たさをあまり感じないと言われています。


肉球の怪我は治りにくい

しかし、固くなるといっても皮膚の一部ではあるので、尖ったものを踏んでしまったり、犬や猫同士の喧嘩などで、肉球がひどく傷ついてしまうこともあります。もともと脂肪と線維組織で張りつめていた肉球の皮膚は傷つくと大きくはじけるように開いてしまいます。そして、表面の硬い部分は血管が非常に少ないため、肉が盛り上がってくるのは他の部分よりも時間がかかります。さらに、犬や猫がその足を使って立ち上がれば、どうしても肉球部分に力がかかるため、塞がりかけた傷口が開いたり、縫い合わせた糸が切れてしまうこともよくあります。さらに、肉球は口が届くところなので、エリザベスカラーのようなもので縫い合わせた傷を防御しておかないと、保護のためにつけた包帯を取ってしまったり、外用薬を舐めてしまうかもしれません。肉球を一度傷つけると、治るのには非常に時間がかかると思っていたほうがいいでしょう。


肉球が存在する理由

肉球を持つ動物の多くは他の動物を捉えて食べる肉食動物です。他の動物に近づく時に、なるべくこっそりと近づくことができるように足音を消すために足の裏が柔らかい肉球になっているという説があります。また、岩場や木の上から獲物に飛びかかるとき、足が滑らないようにしっとりとした皮膚をむきだしにして、着地した時のショックを吸収するように丸く分厚くなっているという説もあります。さらに手根球のすぐ上にある少し長い毛は顔のヒゲと同じようにセンサーの役割を果たしているようです。


肉球だけに汗をかく

ときどき動物病院で見かける風景ですが、診察台の上に乗せた犬や猫の足の裏がじっとりと濡れていることがあります。これは緊張から肉球に汗をかいたものです。いわゆる「手に汗握る」といった状態ですね。動物には2種類の汗の出る分泌腺、汗腺があり、人が熱くて汗をかくのは主にエクリン腺と呼ばれる汗腺からサラサラとした汗を分泌しているからです。しかし、犬や猫の体にはエクリン腺はほとんどなく、唯一肉球の部分と鼻鏡にあると言われています。これは、肉球を常にしっとりさせるためだと言われています。


肉球の色

おうちの愛犬や愛猫の肉球は何色ですか?きれいなピンク色か、それとも真っ黒ですか?中にはまだら模様になっている子もいるようですね。肉球の色は体の色と関係があり、毛色が白っぽい子は肉球の色も薄く、黒っぽい毛並みの子は肉球も黒く、三毛猫のようなまだら模様の場合、肉球はやはりまだらに模様が入っているようです。しかし、肉球の模様は生まれてからずっと同じではなく、成長にしたがって模様が出てくることもあるようなので、おうちの子の肉球も時々チェックしてみるといいかもしれませんね。


肉球にはまだまだ秘密がたくさんありそうです。みなさんも、おうちの愛犬や愛猫の肉球をマッサージしてあげながらいろいろと観察すると、楽しい発見があるかもしれませんね。

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