猫の尿石症 ~膀胱結石~

猫は尿石症になりやすいという話を聞いたことはありませんか?

腎臓や尿管、膀胱から尿道中に結晶や結石ができることを「尿路結石症(尿石症)」といい、進行すると排尿障害を起こし、命の危険が伴うこともある恐ろしい病気です。

今回は、そんな「猫の尿石症」の中でも特に多い「膀胱結石」について、原因と予防方法を詳しくお話していきます。


尿石とは

尿石は、小さな結晶が集まって作られるもので、一言に結石といってもその種類はさまざまです。

猫の尿石症の原因となる結石の成分は、全体のおよそ半数を「ストラバイト」と呼ばれる結晶が占めており、尿を顕微鏡で覗くとその結晶を確認することができます。

ほかにも「シュウ酸カルシウム結晶」による結石も多く、「シスチン結晶」「尿酸アンモニウム結晶」などの種類があります。尿の成分の違いにより作られやすい結石の種類も異なります。


尿石症、膀胱結石になりやすいのは

尿石症は、近年ではペットの生活習慣病になりつつある病気です。原因としてビタミンやミネラルバランスの悪さ、飲水量不足、肥満や運動不足などがあります。また結石ができやすい体質もあるため、遺伝の影響も考えられています。

尿石症はオスメスどちらにも発症する病気で、結石の種類によってできやすい性別が異なりますが、それぞれにできやすい結石があるため、どちらの性別であっても日頃から注意することが必要です。

また、尿石症のなかでも、膀胱に発生する結石を膀胱結石と呼びますが、猫では特に発症する頻度が高い病気です。


症状について

飼い主さんが気づく症状として、

  • オシッコの量が少なく、でづらい感じがする
  • トイレにいる時間が長い
  • 血尿
  • 何となく元気がない

などがあります。

ほかにも、尿がたまった膀胱を圧迫されるために抱っこされることを嫌がったり、膀胱や尿道にある結石が粘膜を傷つけるため、排尿する度に痛くて悲鳴をあげたりすることも多くみられます。

膀胱でできた結石が尿道に詰まってしまうと、尿道閉塞を起こします。特にオスは尿道が細く、比較的長いため、たとえ小さな結石でも尿道につかえてしまうことが多々あります。結石が尿道につまり尿が出なくなると、尿から出すべき老廃物や毒素が体の中に再吸収されてしまうため、中毒症状を起こし、吐いたり、ぐったりしたりといった症状があらわれ、悪化すると痙攣を起こすこともあり命に関わります。

またその反面、メスでは尿道がオスに比べて太くて短いため、小さな石なら尿とともに排出できるので、大きな結石になるまで膀胱にとどまりにくいことが特徴です。


膀胱結石になってしまったら

膀胱結石ができてしまった場合、大きな結石であれば手術をして取り出します。また、小さな結石や結晶であればそれらを溶かすフードを食べさせることで治療をします。すでに尿石が尿道に詰まって排尿が出来なくなってしまっている場合には、尿道を通過させるための緊急処置が必要です。

また、結石や結晶を溶かす効果のあるフードは、結石の種類によって食べさせるものが異なるので、尿の成分を調べることが必要不可欠です。

なお、手術によって結石を取り出しても、以前と同じ生活をしていると半年~1年ほどで再び結石が作られてしまうことがあるため、そのような場合も予防的に結石をできにくくする食事療法を行うことも重要です。


発症後のケア

膀胱結石ができてしまった後は、再発しないように食事療法で結石の生成を予防するほか、飼い主さんが日頃の生活環境を改善することが大切です。フードは動物病院で取り扱っているミネラル調整がされた処方食をできてしまった結石の種類に応じて与えます。

尿が濃く、量が少ない場合は結石を作る要因となってしまうため注意が必要です。そのため予防として、薄い尿をたくさん排泄させるために飲水量を増やすことが重要です。飲水量を増加させるためにドライフード(水分10%)よりも缶詰(水分80%)を与えると容易に水分の摂取量を増やすことができます。水に猫用のスープなどを加え風味付けをし、好んで水を飲むようにするなどの工夫もひとつの方法です。

また、特に冬場は寒いため飲水量が減り動きも鈍くなるため、トイレに向かうことが少なくなります。そのため、トイレが置いてある部屋の室温を18~25℃に設定しましょう。

多頭飼育の場合には常に飲水が自由にできるように数箇所に給水の場所を設置します。高齢であまり動かないような子の場合には、お気に入りの場所や寝床のそばに置くことで水を飲みやすくします。ただし、トイレの近くは汚染の可能性もあるため避けたほうがよいでしょう。

さらに、ストレスの少ない環境を作ることも大切です。特に猫の場合、トイレが汚れていたり、トイレ砂の素材を変えたときに気に入らなかったりすると、排尿することを我慢してしまうこともあるため、それが原因となって結石の生成につながることもあります。

膀胱結石は一度できてしまうと再発してしまうことが多いため、尿量・尿の色・排尿にかかる時間・排尿回数など毎日の状態をよく観察し、日頃から気を配ってあげましょう。

また、定期的に尿検査を行うことも非常に重要です。定期的に尿検査を行うことで、発症後に予防がきちんとできているかどうかが確認でき、もしも再発してしまったとしても、病気の早期発見につながります。


まとめ

膀胱結石ができてしまうと、食事療法がとても重要なため、今まで食べていたおいしいフードを食べさせてあげられなくなることを残念と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、飼い主さんが病気のことをしっかりと理解して再発することのないように管理してあげることで、猫にとってより長い期間、快適で健康な生活を送ることにつながるのではないでしょうか。