「病気でもないのに、何だか元気がない」「動物病院で不調の原因はストレスだと言われた」ということはありませんか?人間と同じように、ストレスは体のあらゆる場所で不調を引き起こすと言われています。
「病は気から」はじまる
ストレスの積み重ねは、体内の免疫力の低下につながるともいわれています。ストレスから発症する病気といえば、人間では胃潰瘍をはじめとした消化器の異常があります。人間関係や、仕事、家庭の問題などの心理的ストレスから潰瘍を起こすことはよく知られている通りです。
人も含めて群れを作る家庭犬も、人とうまくつき合えなければ心理的ストレスを感じるのは同じです。そうした不安から胃潰瘍に似た症状や、神経性大腸炎などの消化管の運動異常による下痢症状などを起こすこともあります。
「病は気から」という言葉がありますが、ストレスはまさに、身体的な病を引き起こす原因にもなるのです。
ストレスとダイエット
犬を番犬として飼うことが一般的だった昔と違い、今は家族の一員として飼われていることがほとんどになりましたが、その影響もあり肥満の犬も増えています。そしてそのダイエットのために急な食事制限や運動を行うのもストレスとなります。食べる量をなるべく減らさずに摂取カロリーを制限したり、運動量を少しずつ増やすなどしてストレスをかけないダイエット方法を取り入れましょう。
ストレスとアレルギー
人では過度なストレスはアレルギーを引き起こすことが証明されていますから、犬でも同じことが言えるでしょう。親からの免疫との関係など、そのメカニズムの解明も進んでいますが、犬に置きかえても成り立つと思われます。また、ストレスの調整役でもある副腎の皮質ホルモンが、アレルギーに有効なことからも関連は明らかとされています。犬の皮膚病といえばかってはノミだったのですが、今はアレルギーや皮膚の抵抗力の低下が問題になっています。
心理的ストレスで身体が弱くなる?
心理的ストレスが加わると、ナチュラルキラー細胞活性値や、リンパ球幼弱化反応に必要なインターロイキン(インターフェロンの仲間)の減少などが起こります。これらが低下すると免疫力が落ちるといわれます。したがって身体が弱くなるといえるでしょう。すべての健康のもとは、楽しい家庭環境なのです。
【愛犬のストレス・マネジメント】
愛犬をストレスから守るためには、何より飼い主の努力が不可欠です。それぞれの環境に合わせたストレス・マネジメント(ストレスの把握と管理)を実践していきましょう。
■ストレスサインに敏感になろう
犬は不安や葛藤といったストレスを受けた時、それに対処するための適切な行動が見つからない場合には、ほかにはけ口を求めるように、無意味な行動にふけったり、前後の脈絡のない、まったく違う行動を起こすことがあります。
それはストレスに反応した犬からのサインであり、飼い主はそれに敏感になる必要があります。また、例えばある特定の行動をしたいと思っている犬が、何らかの理由でそれを止められたり、させてもらえない状況に追い込まれると、まったく別の対象物に向かってそのフラストレーションをぶつける(これを転嫁行動と呼びます)など、状況によってさまざまな動きが見られます。ほかにも次のような行動があります。
● 転位行動 ● 葛藤行動
その場面の前後関係とは関係のない動き。突然のあくびやグルーミング、声を出すなど
● 神経症的行動
正常な行動から派生したものではない動き。自己刺激や尾追い行動など
● 真空行動
本能的または無意識的な動き。身体の一部を吸う、なめるなど
● 常同行動
目的や機能がないのに繰り返される動き。転位行動のひとつとして起こる軽いものから尾追い行動や舐性皮膚炎など強迫性の異常行動まで幅広い
● 強制行動
過度なストレス下に繰り返し置かれることで起こる異常行動。自身でもコントロールできなくなる状態
ストレス行動への対処法
犬の日常的なストレス行動は、ほかにはけ口がないことから行われる転嫁行動のような行為がほとんどです。したがって、飼い主はストレスの原因を取り除くと同時に、愛犬の欲求を満たしてあげる努力も必要です。蓄積されたストレスの多くは、犬の欲求を満たすことで軽減されるためです。ただし、「欲求を満たす=愛犬のしたいようにさせる」ということではありません。例えば、家の中で急に破壊行動を始めた愛犬の場合、仕事や家庭の都合で、急に散歩やドッグランで走りまわるようなことが少なくなり、運動量が足りていないことへのフラストレーションが破壊するという行動に転嫁されているのかもしれません。この場合は破壊行為をやめさせるためにケージに閉じ込めるよりも、存分に身体を動かしてあげることの方が大切なのです。
また、身体の部位を吸うなどの行動そのものが犬にとってのストレスや葛藤への対処法になっていることもあります。無理にやめさせることで、さらに激しい身体的、行動的異常(ほかの病気を引き起こす、物を破壊する、鳴き続けるなど)につながることも考えられます。愛犬の身体に大きな害を生じない場合は、「とにかくやめさせなければ」と焦る前に、その要因となっているストレスのもとを探り、取り除くことに意識を向けることです。
それでも対処が難しい場合は、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
ストレスと上手に付き合う
牛や馬などの輸送では「輸送熱」と呼ばれる症状が起こることがあります。原因は、身体を守るリンパ系細胞の働きが弱くなり、感染を起こしやすくなるためです。
人も動物も、本来、生き物は自分の力で移動します。そのため、乗り物での移動には身体の反応がついていけないところがあるのです。つまり不安な状態での移動は、動物にとって大きなストレスになるということです。犬の乗り物酔いもその一例といえるでしょう。このように、慣れない状況にはすべてストレスが介在すると認識していきましょう。
もし、すでに愛犬がかなりのストレスを抱え込んでいて、常同行動や強制行動などを始めているとしても、諦めないでください。犬がストレスにさらされた場合、それを感じる度合いには個体差があり、その反応や対処の方法も性格や環境によっても異なります。
まずは愛犬との接し方を再検証してみましょう。何か以前とかわったことはありませんか?
そこから原因が導き出せるはずです。
おわりに
愛犬にストレスがかかりやすい場面やタイミングが予測できるようになれば、ストレス行動を始めそうになると同時に遊びや訓練、食事、おもちゃを与えるなどといった代替の行動をさせてみましょう。そうして少しずつ矯正に導くことが望ましいでしょう。まずは、愛犬のまわりのストレスを少しずつ軽減していくことからトライしてみましょう。
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