「犬の種類っていっぱいあるけれど、うちの子のルーツってどんな犬だろう?」そんなことを思ったことはありませんか?人間に原始時代があったように犬にも起源があり、それが長い過程を経て徐々に改良し、今の犬種に分かれました。
今回は犬の系統を追いながら、犬同士の近い関係をみていきましょう。
うちの子の先祖はどんな犬?
犬の先祖はオオカミと言われていますが、それよりもさらに古代の先祖は「トマークタス」という動物でした。それから徐々に人間の手により現代の『犬』へ改良されていったとされています。では、現代の犬はオオカミからどのような経緯をたどって今のような姿になったのでしょうか?
オオカミから徐々に容姿や使用目的で分化・改良されていった犬種は、大きく4つのグループ(以下A~D)に分けることができます。これらの犬たちの多くは、現在何百種類とある犬種の祖先となっています。
次に、これらをグループ別に見ていきましょう。
改良された犬種
■Aグループ
Aグループは「シープドッグ系」の犬種で、牧羊犬に属する犬が多いのが特徴です。ラフ・コリー以外はさほど改良されておらず、同じ形で現在も親しまれています。
『ラフ・コリー』は、オーストラリアン・キャトル・ドッグ、ウェルシュ・コーギー、ボーダー・コリー、シェトランド・シープドッグ、スムース・コリーなどの先祖にあたります。さらに各国で理想的な牧羊犬として、オーストラリアン・ケルピー、オーストラリアン・シェパード、ベルジアン・シェパード・ドッグなどの犬種がのちに誕生しました。
このグループの犬種をよく見ると、スッとした長い鼻やピンと立った大きな耳という共通性がありますね。
■Bグループ
Bグループの犬は1つの祖先からそれぞれシベリア、中央アジア、ヨーロッパに分かれて広がっていきました。
『サモエド』はシベリア原産の犬で、北方犬種であるスピッツ系と言われる、ポメラニアン、スピッツ、キースホンド、ノルウェジアン・エルクハウンドなどの先祖にあたります。その中でも『スピッツ』は、さらにその後、アラスカン・マラミュート、シベリアン・ハスキー、日本スピッツに改良されました。
『スピッツ』は、北海道犬、秋田犬、紀州犬、四国犬、甲斐犬、柴犬といった日本犬の原型にもなっています。『土佐犬』は、四国犬にブルドッグやマスティフ、ブルテリアなどの洋犬を掛け合わせているため、他の日本犬とは少し容姿が異なります。
そして、『ポメラニアン』が分化した犬種に、スキッパーキやチワワが属します。
【サモエド】
『サモエド』を基とするこの犬種たちは、鼻先が尖っていて毛が密であるところが似ています。よく見ると、ポメラニアンはとても小さなサモエドのようですよね。
さらに、サモエドを先祖に持つ『ショック・ドッグ』という犬種が主にヨーロッパで改良され「スパニエル系」が誕生しました。そしてスパニエル系を鳥獣犬として活躍させるため改良を重ねた結果、プードル、パピヨン、クランバー・スパニエル、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルといった数多くの犬種が作られました。そのスパニエル系に狆やパグなどの鼻の短い犬をかけ合わせ作られたのが、キング・チャールズ・スパニエル、それをさらに小型化して、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルが誕生しました。
これらの犬種はすべて遠い親戚ということになるので、先祖をたどると実は身近にいる「パピヨン」と「プードル」も、『サモエド』を先祖としている共通点から意外と近い仲なのです。
そしてその後、スパニエル系を改良して「ポインター系」が作られました。そのポインター系にブラッドハウンドがかけ合わされ誕生した犬種がイングリッシュ・ポインターやジャーマン・ショートヘアード・ポインター、ワイマラナーやビズラなどです。これらの犬種にはスラッとした体型や短毛の毛、小判型の垂れた大きな耳など、たくさんの共通した特徴がありますね。しかし、ここまで改良を重ねて時が経つと、先祖となるサモエドとはかなり体型が変わっています。
そのほかにもポインター系は数多くの改良に用いられました。
ポインター系とグレート・デーンからダルメシアンが作られました。ポインター系にスパニエル系を交配して作られたイングリッシュ・セターは、セター系の中で最も古い歴史を持つといわれています。そのイングリッシュ・セターを改良して後にアイリッシュ・セターやゴードン・セターが誕生しました。
このように系統をたどっていくと、サモエドはすべての犬種の中で一番子孫を持っている犬種といっても過言ではないでしょう。
【ラサ・アプソ】
『ラサ・アプソ』は2000年以上前からチベットで飼育されていることが知られている犬種です。これを改良してペキニーズ、チベタン・スパニエルが誕生し、ラサ・アプソとペキニーズをかけ合せて作られた犬種がシー・ズーです。この4犬種を並べて見たら、元が同じ犬種であることは一目瞭然です。
【マルチーズ】
『マルチーズ』は3000年以上の歴史を持つ古い地中海の犬種で、ここから、容姿が似ているビション・フリーゼやボロニーズが誕生しました。マルチーズもビション・フリーゼもボロニーズも、みんな毛色が真っ白という共通点があります。昔は白以外の毛色のマルチーズも存在したのですが人為的に真っ白な毛色同士を選んで交配を重ねた結果、きれいな純白のマルチーズが誕生したといわれています。
■Cグループ
Cグループの祖先となる『サルーキ』はサイトハウンドと呼ばれ、顔も体つきもほっそりとしているという特徴があります。ここからもさまざまな犬種が誕生しました。
【サルーキ】
『サルーキ』はボルゾイ、アフガン・ハウンド、グレーハウンド、イタリアン・グレーハウンドなどの先祖にあたります。きゅっと締まったウエストで足の長い容姿という共通点がありますね。アフガン・ハウンドは多くの品種改良に使われ、ビーグル、ダックスフンド、ゴールデン・レトリバーなどの先祖にもあたります。そう言われてみれば、ゴールデン・レトリバーとダックスフンドの顔が似ている気がしませんか?
その後、アフガン・ハウンドとブラッド・ハウンドからバセット・ハウンドが誕生しました。アフガン・ハウンドのようなスラッとした美しい容姿から胴長短足のダックスフンドやバセット・ハウンドが作られたというはちょっと意外ですね。
また、グレーハウンドを基にアイリッシュ・ウルフハウンドやグレート・デーンが誕生し、グレー・ハウンドとテリア系からウィペットが作られました。
さらに、グレーハウンドやビーグルの血を受け継いで「テリア系」の改良が進み、スコティッシュ・テリア、ケアーン・テリア、エアデール・テリア、ウェルシュ・テリア、スカイ・テリア、アイリッシュ・テリアなど、数多くのテリア系の犬種が誕生しました。
そのテリア系のスカイ・テリアにマルチーズをかけて作られたのがヨークシャー・テリアです。さらにヨークシャー・テリアを改良して、オーストラリアン・テリアやシルキー・テリア、ブリュッセル・グリフォンなどが作られました。また、まれに生まれていた白い毛のケアーン・テリアを改良して作り出されたのがウェスト・ハイランド・ホワイト・テリアです。
グレーハウンドとビーグルとテリアには全く共通点がないように見えますが、こう見ていくと実は広い意味で「お父さんとお母さんと子ども」と言えるんですね。
■Dクループ
Cグループの祖先となる『チベタン・マスティフ』はその名の通りチベット原産の大きな犬ですが、これがヨーロッパに渡り数多くのワーキングドッグの祖先となりました。
グレート・ピレニーズ、マスティフ、セント・バーナードなどの大型の犬種は皆、チベタン・マスティフが祖先です。
そのグレート・ピレニーズを改良して『ニュー・ファンドランド』が誕生し、その『ニュー・ファンドランド』からはラブラドール・レトリバー、さらにニュー・ファンドランドとスパニエル系をかけてフラットコーテッド・レトリバーが作られました。
また、マスティフを改良してナポリタン・マスティフやバーニーズ・マウンテン・ドッグ、ロットワイラー、ブルドッグが作られ、マスティフとブルドッグを交配してブルマスティフやボクサーが誕生しました。
ロットワイラーに、グレイハウンドやワイマラナーをかけ改良された犬種がドーベルマンです。なお、パグはマスティフを小型に改良したものといわれており、ブルドッグにパグやテリアなどを交配してフレンチ・ブルドッグが作られました。また、ブルドッグとテリア系よりブル・テリアが、さらにその後、ブルドッグとブル・テリアを交配してボストン・テリアが誕生しました。
日本原産犬である狆は、チベタン・マスティフやペキニーズの血を引くといわれています。そしてチベタン・マスティフとサモエドの交配によってチャウ・チャウが作られました。
これらDグループの犬種の共通点がどこだかわかりますか?愛嬌のある目元と垂れた上唇はこのグループの特徴ですね。
『マスティフ』からはその後、「フランダースの犬」のモデルとなったブービエ・デ・フランダースが作られ、さらにスタンダード・シュナウザーへと改良されていきました。そのスタンダード・シュナウザーを基礎犬としてジャイアント・シュナウザーが、また、スタンダード・シュナウザーとピンシャーとの交配でミニチュア・シュナウザーが作られました。さらにスタンダード・シュナウザーと、トイ・マンチェスター・テリアやイタリアン・グレーハウンドを交配してミニチュア・ピンシャーが誕生しました。
シュナウザー系がこのグループに属するのも驚いたのではないでしょうか。例を上げるならミニチュア・シュナウザーとパグが遠い親戚なのです。
おわりに
いかがでしたか?たくさんの犬種がありすぎて、混乱してしまったかもしれませんね。
犬種の名前を聞いて容姿が浮かばなかった方は、ぜひ犬種図鑑やネットで調べてみてください。「確かにつながりがありそう!」「この犬種とこの犬種が繋がってるなんて、意外!」など、いろんな感想が出てくると思います。
犬好きにはきっと楽しい発見があると思いますよ。
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