犬の皮膚に1番多い病気~膿皮症~

「ブツブツができて、広がってきて、痒くなってくる・・・」

といった症状が出てくる犬の代表的な皮膚病「膿皮症」は、予防や早期発見が大切です。

今回はそんな「膿皮症」について、詳しく説明していきます。


膿皮症の分類

感染の浅い順に表在性膿皮症(膿痂疹)、浅在性膿皮症、深在性膿皮症に分けられます。


【表在性膿皮症(膿痂疹)】

皮膚の表面のみに感染している状態です。肉眼で見るとプチっとしたニキビのような小さな膿ができています(丘疹と呼びます)。病変の色は皮膚の色そのものの場合もあれば、膿が多く溜まっているケースでは薄い黄色をしている場合もあります。


【浅在性膿皮症】

細菌の侵入が少し深くなっており、毛包(毛の根元)の角質層や毛包と毛包の間の表皮の中に広がっていきます。肉眼で見た病変部は「表在性膿皮症と同じような病変」と「小さな丘疹がはじけた赤くて丸い病変」が混在しています。毛包が炎症で破壊されると、毛が抜けてしまいます。


【深在性膿皮症】

細菌の侵入が真皮と呼ばれるもっと深い部分まで及びます。痒みもひどく、カサブタができて出血したり、皮膚が部分的に象のように厚くなったりします。全身にも影響を及ぼすようになり、熱が出たり、元気がなくなったり、食べていても痩せてきたりすることもある重症の状態です。このような状態になると、治るのに時間がかかります。


膿皮症を引き起こしやすい犬

どんな犬種でも膿皮症になることがありますが、ダックスフンドやゴールデンレトリーバー、キャバリア・キングチャールズ・スパニエル、ミニチュア・ピンシャーなどは、かかりやすい犬種です。典型的には0歳から2歳くらいまでのまだ若くて皮膚が弱い時期にかかりやすいのが特徴です。

また歳をとって内分泌疾患(ホルモン系の病気)や肝臓病などになった犬にも多くみられます。アレルギーや脂漏体質(ベタベタと脂っぽくなりやすい皮膚の体質)の犬は膿皮症を繰り返しやすい体質といえます。


症状

最初は表面が小さく化膿しているだけですが、徐々に深くかつ数多くの病変に進行していきます。

病気が進むにしたがって、痒みや脱毛がひどくなるのが特徴的です。体幹部(胴体部分のこと=背中とお腹)に病変がよく見られますが、幼い犬の場合は下腹部などおしっこで汚れやすい部分にも見られます。

やたらと痒がったり、皮膚のブツブツや円形病変が見られるときには、すでに脱毛が起きていることが多いです。


原因

湿気や汚れ、痒みによる掻き壊しなどにより細菌が繁殖しやすく、また小さな傷口から角質内に侵入しやすくなることで病変が生じます。根本的な原因は分からないことも多くありますが、アレルギーや内分泌疾患が原因で、膿皮症になりやすくなることもあります。

細菌が増殖することで産生される物質が炎症を引き起こし、滲出物(体内から出る分泌液。浅い傷口から染み出る透明の液体のこと)がまた細菌の栄養になって…と悪循環が起きてひどくなってしまうこともあります。


検査方法

よく似た症状の皮膚病に、皮膚糸状菌症(カビによる皮膚病)や、ニキビダニ症、疥癬症などがあります。これらの皮膚病と区別するために毛を抜いたり、フケを集めたり、皮膚表面の細胞を顕微鏡で見る、などの検査を行います。

膿皮症と他の皮膚病が合併している可能性が高い場合、血液検査や皮膚病理検査が必要になることもあります。


治療方法

診断がついたら、抗生物質を投与する治療が一般的です。投与期間は2週間以上に及ぶことがほとんどです。

多くの皮膚科医の経験によると、長めの投薬期間が必要と考えられています。短い投薬期間ではすぐに再発するケースが多いからです。

軽症の場合や部分的な場合は、シャンプー療法のみ行うケースもあります。特に幼犬で小さな病変の膿皮症は自然と治る場合もあります。

他の皮膚病に合併している場合、両方の治療を並行して進めます。


予防方法

尿で汚れやすい下腹部、食べ物で汚れやすい口の周り、分泌物などで汚れやすい部分(陰部の周囲や内股)は常に清潔にしておきましょう。全身をよくブラッシングしてあげて皮膚の風通しを良くしておきましょう。雨に濡れたあとやシャンプー後は十分に乾かしましょう。

このように、皮膚を常に清潔に保つことや、高温多湿にならないように環境を整えてあげることが、膿皮症の予防として非常に重要です。


おわりに

膿皮症になりやすい犬は何度も繰り返す傾向があります。先ほどご紹介したような予防を心がけると共に早期発見・早期治療を意識しましょう。早期に病気を発見して早めに治療を開始することが、投薬期間や治療期間を短くすることに繋がります。

そのためには飼い主さんが日頃からペットとよくコミュニケーションを取りながら、毎日全身をよく見てよく触ってあげることが大切です。

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