子犬にとって、一定の時期に刺激を与えることはとても重要で、光に触れさせないと正常に視覚機能が発達しないこともあります。
今回は、体の機能が正常に働くための大切な時期、臨界期についてお話します。
臨界期とは?
動物はそれぞれ親から受け継いだ遺伝子を持っていますが、その遺伝情報は刺激がなければ正常に機能することはできません。臨界期は、遺伝子が正常に機能するための刺激を受ける、一生に一度の大切な時期です。
また臨界期とは、脳の中で記憶したり感じたりする神経回路(ニューロン)が外からの刺激により集中的に作られたり、回路の組み替えが盛んに行われる、感受性が豊かな限られた時期です。「視覚の臨界期」「聴覚の臨界期」など、それぞれの機能ごとに「臨界期」が存在します。
脳の仕組み
脳に存在する神経回路はインプットが少ないと機能が失われてしまい、インプットされる情報が多いほど回路が強化されるという仕組みになっています。
そのため、臨界期までに一度もインプットを行われなかった神経回路は、臨界期を越えると機能が失われてしまいます。
犬に訪れる臨界期
犬の場合、新生児期は外部からの刺激を受けて視覚・聴覚・嗅覚が正常に機能するための大事な時期です。鼻と眼で兄弟や親の存在を確認するこの時期は学習にとっても大事な時期であり、この期間中に学習をしないと親やほかの犬の臭い、人間の臭いを嗅ぎ分けることができなくなってしまいます。
それでは、犬の臨界期をステージ別にお話します。
犬の臨界期 ~第1臨界期 (0~3週齢)~
子犬は、生後21日の間は常に母親と共に過ごします。特に生後5~6日間は、母犬が食事をするときも離れることはありません。これは、子犬が母親に依存しているだけではなく、生まれたばかりの子犬の体温は29.4~32.2℃ほどしかないため、母犬や兄弟に寄り添うことによって体温が低下しないように保温をしています。
犬の臨界期 ~第2臨界期(4~7週齢)~
生後22日目頃からは視覚・聴覚・嗅覚が機能し始め、「学習」ができるようになります。
また、この時期から「社会化期」が始まります。この期間で脳や神経系が発達し、7週目までに成犬とほぼ同じレベルの機能をもつようになるといわれています。この時期にほかの犬と遊ぶことは幅広い成長を遂げるために、非常に重要となります。
一方、7週以前に母犬や兄弟と離れてしまうと完全に社会化ができず、人やほかの犬に対して攻撃的になったり、大きな音に過剰に反応するようになってしまいます。
犬の臨界期 ~第3臨界期(7~12週齢)~
第3臨界期である7~12週齢は、人と犬の関係を形成する上で非常に重要な期間です。この期間は心理的にも感情的にも非常に敏感で感受性豊かな時期のため、さまざまな経験をさせたほうがよいでしょう。
犬の臨界期 ~第4臨界期 (12~16週齢)~
この時期になると子犬は母犬から独立し始め、犬は誰に従うべきかを判断するようになります。16週齢までに社会化が不十分であった犬は、ほかの犬と仲良くなることが極端に少なくなります。
犬の社会化期に関する「臨界期」は生後3~16週齢といわれています。この短い期間の影響が子犬の発育において重要であることを理解しておきましょう。
また、犬に限らず猫を含むペットにとって、臨界期の過ごし方が性格の形成に大きくかかわります。まだ幼い動物をペットとして迎えるという飼い主さんは、どのように過ごさせるかを考えておくとよいかもしれませんね。
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