ペットも高度医療化の時代になり、人と全く同じ検査が行われるようになりました。
高度な検査を行う機械は、まだ一部の動物病院でしか使用されていませんが、これから普及してくると思われる検査の中で、今回は画像を見ながら診断を行う“CT”、“MRI”、“PET”についてお話をしていきたいと思います。
CTとは?
CTとはコンピュータ断層撮影法(Comuputed Tomography)の略で、X線で撮影した像をコンピュータを使って解析し、体を輪切りにした状態の像を撮影する検査です。
通常、動物病院で使用されているCTはレントゲン検査と同じX線を使用しているため、正確にはX線CTと呼ばれています。
CTの長所
CTの長所は、レントゲン検査では曖昧な部分もはっきりと見ることができるというところです。通常のレントゲン検査は、影絵の要領でX線を一方方向に照射するため、2次元でしか中の様子を撮影することができません。しかし、CTは体を輪切りにした状態で360度撮影することができるため、胸の中やおなかの中などレントゲン検査では場所によってよく分からないところもより詳しく検査することができます。たとえば肺などに転移した腫瘍を探す場合、通常のレントゲン検査では肋骨の陰に隠れてしまうような小さな腫瘍でも、輪切りの状態で見ると肺の中にあることがはっきりと見ることができます。
CTの短所
CT検査の短所は麻酔をかけなければいけないということです。CT検査を行う場合、最短でも撮影に数秒かかってしまうため、検査の間はじっとしていなければいけません。しかし、動物の場合は検査の間じっとしていることができないので保定が必要ですが、CT検査を行う際にはX線を使用するため、被爆してしまうために人間が保定することはできません。そのため、CT検査を正確に行うためには全身麻酔をかけて行なわなければいけないのです。
また、麻酔を使用すると呼吸器や腎臓に負担がかかってしまうことがあります。重症な子の場合は、麻酔のリスクが高まるため、検査を実施する際には長所と短所を十分に考慮する必要があります。
MRIとは?
MRIとは磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging)の略で、CTと同じように体の断層像を撮影する検査ですが、CTがX線を使用するのに対して、MRIは磁気を使って撮影します。
MRIの検査を行う場合、体を強い磁場の中にいれ、特定の周波数の電磁波を流すことによって体内の水素原子と磁気共鳴させます。このときの振動がどこで起こっているかをもとにして体内の状態を画像化します。
MRIの長所と短所
MRI検査の長所は、横断面だけでなく、縦・横・斜めなど、あらゆる角度の断面図を撮影することができるところです。特に脊髄などの神経系の異常を見つけることに優れています。また、頭蓋骨で覆われている脳などの異常は、通常レントゲン検査やCT検査など、X線を使用した検査では骨の中まで詳しく見ることができませんが、MRIを使用すれば脳の様子まで撮影することができます。一方、肺や骨について詳しく見るにはCTの方が優れています。そのため、目的によって検査方法を選ぶことが大切です。また、造影剤を使用しなくても、血管だけを強調させて撮影することができるという利点もあります。
MRI検査の短所ですが、CTと同様に全身麻酔が必要になるため、CT同様に麻酔のリスクを伴うところです。また、CTが秒単位で撮影できるのに対して、MRIは20~30分と検査に時間がかかってしまうという点も、MRIの短所のひとつです。
PETとは?
PETとはポジトロン断層撮影法(Positron Emission Tomography)の略で、MRIやCTと異なり、体の代謝活動を画像化します。
体の断面等を撮像する点ではCTやMRIと同じですが、CTやMRIが特定の部位形態を画像化するのに対して、PETは代謝がどれだけ活発に行われているかを画像化する点が大きく異なります。
PET検査を行う場合、トレーサーと呼ばれる代謝が活発に行われている場所に集まる性質を持った物質を使用します。トレーサーは腫瘍などの代謝が活発な部位に集まって陽電子を生成します。陽電子は付近の電子とくっつき消滅することでγ線を出します。このγ線を検出することで代謝が活発な部位を見つけ出すのがPETの原理です。
癌の組織は多くの場合、糖分(グルコース)代謝が活発になるので、このことを利用して癌を見つけるための検査として応用されています。
PETはまだまだ動物病院で広く導入されている手法とはいえませんが、犬や猫の医療に応用するための研究はすでに始まっています。
まとめ
個人開業の動物病院ではまだまだCTやMRIを使用している病院は少ないですが、これらの病院でも施設の整った大きい動物病院や大学病院などと連携して高度診断検査を行えるようにしているところが多いようです。
ペットの高度医療化が進む現代であるからこそ、様々な検査を利用して少しでも多くのペットの病気が診断され、治療に反映できるようになってほしいですね。
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