ストレスが原因?~犬・猫の脱毛症 ~

脱毛の原因は、アレルギーや細菌感染、ホルモン障害、寄生虫、カビなどのほかに、精神的な問題もあります。 今回はその精神的なストレスが原因で起こる脱毛に関してお話していきます。


心因性(ストレス性)とは?

脱毛は何かしらの病気が原因で起こるものがほとんどです。その原因となる病気はアレルギー、膿皮症、ホルモンによる内分泌疾患、外部寄生虫などの皮膚病がほとんどで、挙げればきりがありません。

しかし、脱毛を起こす病気の中には「皮膚自体には原因がない脱毛」もあります。それが「心因性脱毛」です。心因性とは、心理的なものが原因で起こる病気のことです。よく使う言葉で置き換えれば「ストレス」といえばよいかもしれません。実は飼い主さんの思っている以上に、犬や猫の心はデリケートなのです。


なぜ起こるの?

この病気は何か心理的な変化があったときに、それがストレスや不安のかたまりとなり起こる病気です。その精神的変化から毛細血管が収縮し、血行が悪くなることで毛が抜けてしてしまいます。

いつもより強くしっぽを噛んだり、必要以上に足を舐めたりすることで毛が抜けてしまったり、猫の場合は過剰な毛づくろいによる脱毛などもみられます。

また、この病気は年齢や犬種、猫種に関わらず、誰にでも同じように発症します。ただしどちらかといえば精神的に弱い子、例えば臆病だったりおとなしかったり社会性があまり身についていない子のほうが、我慢をしたり不安になったりしてストレスを受けやすいため、発症することが若干多いようです。


ストレスを起こす原因の例

・飼い主さんが忙しくてあまりかまってくれない。

・かわいがってくれた人が傍にいなくなってしまった。

・その逆に、犬や猫を嫌う人が同居することになった。

・気に入っていたものがなくなってしまった。

・ご飯やトイレの場所が急に変わった。

・あまり散歩に行かなくなった。

・猫の場合、外に出してもらえないなど自分の行動が制限される。

など、その子が不安や不快に思うことが続いたり、自分の思い通りにならないような場合が原因として挙げられます。

なお、犬や猫が感じる不安においては、何度も何度も同じところを舐める行動を起こし、それによって毛が抜け続け脱毛を引き起こしてしまいます。



診断方法

動物病院で脱毛の原因となるアレルギーや細菌感染、ホルモン障害、寄生虫、カビなどが発見されない場合に、精神的な問題からくる心因性脱毛と診断します。

飼い主さんの記憶の中で、脱毛が起こり始めた少し前に思い当たるような環境の変化がなかったか、犬や猫がストレスを受けるようなことをしていないか、もう一度考えてみましょう。心あたりがあったとしたら、必ずしもそれが原因と断定できるわけではありませんが、脱毛を治療するための大きな手がかりとなるかもしれません。


症状

心因性脱毛の症状は、本来の皮膚病とは異なり皮膚自体には病変がありません。よってストレスなどによる血行不良からくる脱毛であれば毛根から抜けるため、人間の「円形脱毛症」と同じように、きれいな皮膚が露出した状態になります。

全身が毛で覆われた犬や猫においては発生場所も特に決まっておらず、痒みもないため脱毛部を気にすることもありません。

また、舐め過ぎたり過剰な毛づくろいにより脱毛してしまった場合は、切れ毛によりその部分は短い毛が残った状態になります。舐めることで口の中の菌が皮膚に付き二次的に細菌感染を起こしてしまったり、その部分が唾液により蒸れてしまい、皮膚炎を起こします。

精神的なストレスがそのまま持続すると、脱毛以外に食欲不振や胃腸障害、はたまた自律神経のバランスが崩れホルモンに障害を起こしてしまうこともあるようです。


治療方法

第一の治療は、とにかくその子が不安がっていること、ストレスを起こしている理由、行動問題の原因などを追求し、それを取り除くことです。

なかなか思いつかない場合には、身体を舐めている時間帯やその前後の状況を記録し、その行動をしている理由を推測することができれば、環境や飼い主さんの対応を変えることで、その行動をやめさせることも可能といえます。

もちろんそれでもダメな場合は、抗不安剤や精神安定剤を飲ませる必要があるかもしれませんが、必ず何かしらの原因があるはずです。日常生活をよく観察したり、脱毛が起こった時期に何か環境的な変化があったかどうか、飼い主さんの記憶をたどったりして、できる限りその原因を解明しましょう。



まとめ

心因性の脱毛は根気よく原因を特定しそれを遠ざけ、時間をかけてゆっくり見守ってあげましょう。

その中で一番大切なのは、ペットの苦痛を軽減してあげて、少しでも長く家族と穏やかな生活を送れるようにしてあげることなのかもしれません。毎日の生活において犬や猫が常にリラックスできる環境を作ってあげましょう。また、ブラッシングやコーミングは、皮膚の血行をよくするのと同時に新陳代謝を促進します。犬であれば散歩にたくさん行ったり遊んだりして、気にかけてあげましょう。

飼い主さんとのスキンシップを保つことでペットはリラックスし、気持ちを安定させることができます。そしてそれは皮膚の状態を良好にするだけでなく身体の健康増進にもつながるのです。

心因性脱毛の予防としてもっとも必要なことは飼い主さんの愛情であり、それは犬や猫の心身両面の健康維持にもつながるといえるでしょう。

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