心臓マッサージを知っておこう

心臓マッサージは、動かなくなってしまった心臓のかわりに全身の臓器に血液を送り、酸素不足にならないようにするために行います。当たり前ですが、犬や猫も人と同じように心臓が止まってしまうと数分以内に亡くなってしまうため、心臓マッサージ法を知っているのといないのとでは、正に生死を分けることもあるのです。今回は、万が一のときのために知っておきたい、心臓マッサージについて解説をします。


心臓が止まる緊急事態

たとえば、交通事故や高所からの落下で体を強打した場合、心臓が止まってしまうことがあります。また、部屋の中にある電気コードを遊んでかじって感電してしまった場合、また飼い主さんと一緒にアウトドアに出かけた犬が海や渓流で溺れてしまった場合、火事に巻き込まれて煙を吸ってしまった場合など、心臓が止まってしまう事故は様々考えられます。

また、高齢のペットにも人と同じように狭心症や心筋梗塞などの心臓病があり、これらが原因で心臓が止まってしまうこともあります。


鼓動の確認

ペットの心臓の鼓動が外から感じられる場所は、頚動脈胸部股動脈の主に3箇所です。

動脈はその正しい位置に触れないと鼓動を感じることが難しいため、一番確実なのは胸部を直接心臓の鼓動を感じる方法です。ペットの左の腋の下に近い場所の胸にそっと指を添えてみましょう。指に鼓動が感じられない場合は心臓が動いていません。


心臓マッサージ法

①まずペットを平らなところで右下になるように寝かせます。

②横向きに寝かせたまま、首をまっすぐ前に伸ばし、のどに空気が通りやすい状態にします。

③口を開けて中を確認します。もし、のどを塞いでいるもの(吐いたものや唾液の泡など)があれば取り除きます。唾液の泡はガーゼやタオルで拭いましょう。

④心臓の位置は左前足の肘のあたりです。そこに手の平を上から当てます。子犬や子猫の場合は、親指を上にして手の平で胸をはさみこむようにしてもよいでしょう。

⑤小型犬の場合は1分間に120回くらい、中~大型犬の場合は80~100回くらいのスピードで胸を押していきます。押す強さは小型犬は胸が1~2cmほどへこむくらい、大型犬は3~4cmくらいです。

心臓が止まっている場合には呼吸もしていないため、心臓マッサージと人工呼吸を組み合わせて行います。心臓マッサージを15回行ったら人工呼吸を2回行い、心臓の動きがあるかどうかを確認します。もし、まだ心臓が動き出さないようであれば、また心臓マッサージを繰り返します。

人工呼吸

<長頭種>

心臓マッサージの体勢と同じで、横向きに寝かせて首をまっすぐに伸ばします。吹き込む息がもれないように口の両端をおおって鼻先を持ち、口をぴったり閉じます。自分の口を犬の鼻に密着させて、鼻から1秒かけて大きく吹き込みましょう。犬の胸が膨らんでいれば空気が肺に入っているということです。

<短頭種・猫>

長頭種とやり方は同じですが、鼻が短いためコツが必要です。口から息がもれていないか確認しながら、鼻から息を吹き込みます。


※人工呼吸については、こちらの記事もご覧ください。



マッサージを続けながら動物病院へ

ペットの心臓が止まってしまったときは、心臓マッサージを続けながら、別の人が動物病院にすぐに連絡をします。病院へ向かっている間も心臓マッサージを続けましょう。

ペットを飼われている方は、その子が健康なときにどこで心臓の鼓動を感じることができるのか、どのくらいの速さや強さで鼓動をしているのかを確認しておきましょう。頚動脈は首の気管の両側、股動脈は左右の太ももの内側の付け根のやや深い場所にあります。もし鼓動の速さがわかれば、応急処置の際の参考になるでしょう。

落ち着いて行動することが応急処置でもっとも大切なことです。万が一に備えて、応急処置の知識や、連れて行く病院(かかりつけ医以外にも休診日や夜間に連れていける病院も)のリストアップも行っておきましょう。

ペットクリニック.com

獣医師発信のペット情報サイト