ペットの耳が真っ赤になってしまう外耳炎は比較的よく見られる病気ですが、この「外耳」と呼ばれるのは厳密にはどこからどこまでを指すのでしょう?
また、外耳の奥にはさらに「中耳」と「内耳」と呼ばれる部位があり、そこまで炎症が広がってしまうと中耳炎・内耳炎といった大変な病気になってしまうことをご存知でしょうか?
今回は、意外と知られていない、ペットの中耳炎や内耳炎について解説します。
耳の構造
まず、耳がどのような作りになっているのかをお話ししましょう。
まず、私たちが耳と認識しているヒラヒラした部分を「耳翼(じよく)」といいます。耳翼から奥につながる道のことを「耳道(じどう)」といい、突き当りには「鼓膜」があります。ここまでが「外耳(がいじ)」です。外耳炎は、耳道がダニに感染したり、異物によって刺激を受けたり、アレルギーを起こすことなどによって発症し、そこに細菌や真菌が感染することによってさらに悪化していきます。
鼓膜の奥には「鼓室(こしつ)」と呼ばれる空洞があり、耳管で鼻の奥とつながっています。よく、気圧が変化した時に“耳抜き”をするのは、この耳管を通して行っています。鼓膜には「ツチ骨」「キヌタ骨」「アブミ骨」と呼ばれる3つの非常に小さな骨があり、3つ合わせて「耳小骨」と呼ばれる骨がつながっています。これらの骨は、音による鼓膜の振動を増幅して、さらに奥の内耳に伝える働きをしています。ここまでが「中耳」です。
ここから脳までの「内耳」には、音を伝える働きと平衡感覚をつかさどる2つの働きがあります。音は耳小骨からの振動をカタツムリのようにぐるぐると渦を巻いた器官「蝸牛(かぎゅう)」を通して聴神経に伝えられます。蝸牛の中はリンパ液で満たされており、その中には振動を神経信号に変える毛が並んで生えています。また、卵形嚢、球形嚢、三半規管と呼ばれる運動方向や重力を感知する器官、これらを合わせて「前庭器官」と呼ばれるものも存在しています。
中耳炎、内耳炎の原因
外耳炎の多くは、耳道に細菌や真菌が感染することによって起こりますが、これらの感染がさらに広がって中耳や内耳に及ぶことがあります。また、外傷や激しい炎症により鼓膜に穴が開いてしまったことが原因となって、中耳炎が起きてしまうこともあります。
中耳は耳管で鼻腔とつながっているため、蓄膿症など鼻の病気から中耳炎に発展してしまうこともあります。さらに全身の感染症から内耳炎を併発することもあります。
中耳炎、内耳炎の症状
外耳炎は頭をしきりに振ったり、うしろ足で掻いたりといった、どちらかというと痒みや違和感などの症状を示すことがほとんどです。しかし、中耳炎・内耳炎の場合は痒みよりもじっとして痛みを訴えることが多く、炎症が聴神経や前庭器官に及んでしまうと、耳が遠くなってしまったり、体のバランスが保てなくなってしまうこともあります。頭を常に傾けて(斜頚)まっすぐに歩けなくなってしまったり、眼振(がんしん)といって眼球が自分の意思とは関係なく上下や左右に揺れつづける症状が見られることもあります。前庭器官の障害は、いわば「乗り物酔い」と同じことなので、食欲がなくなったり、吐き気をもよおすこともあります。
少し意外に思われるかもしれませんが、内耳炎が原因で目の周囲に症状が見られることがあります。
・まぶたが垂れさがる
・瞬膜が目を覆う
・眼球が落ち窪み、瞳孔が縮む
上記のような症状は「ホルネル症候群」の可能性があります。内耳のすぐそばを通って目の周りに分布する神経が障害を受けて発症するものです。
中耳炎、内耳炎の治療
外耳炎が原因となっている場合には、まずそちらを治すことが大切です。しかし鼓膜が破れている可能性がある場合には、液体の薬剤で外耳道を洗うことはできません。全身に抗生物質の投与を行ったり、ミミダニの治療を行ったりします。
また、外耳炎が治りにくい場合や鼓室に膿が溜まってしまったような場合には、手術で耳道や鼓室を切開する手術を行うこともありますが、難聴や斜頚などの神経症状は治療後も残ってしまう場合があります。
まとめ
外耳炎はペットによく見られる病気なので、少し様子を見ようと思う方が多いようです。
しかし、顔の周りは脳にも近く、たくさんの神経が走行しているため、外耳炎が悪化して中耳・内耳に波及すると治療はとても困難なものになります。耳を痒がる、首を振る、嫌な匂いがするなどの外耳炎の症状が見られたら、早めに治療するようにしましょう。
0コメント