ペットの中毒

家の中は安全なようで、実はペットにとって危険なものがたくさん潜んでいます。特に中毒を起こしてしまうようなものは命の危険もあるため、ペットが口にしないように日ごろから注意する必要があります。今回は、どんなものがペットの中毒を起こすのかについてお話をします。


ユリ科の植物と海の幸

長ねぎ、玉ねぎ、にんにく、ニラ、ユリ根は、有名な「ねぎ中毒」の原因となります。カサブランカを始めとするユリの花々、すずらんも含まれます。これらは、含まれる成分に毒があるため、ねぎ類が入った味噌汁やシチュー、お鍋の汁だけをペットに与えても中毒になります。人間のアルコール中毒と同様に個体差があるため、どのくらいの量を与えたらどのくらい悪くなるのかはわかりません。少量でも命を落とす可能性が十分にありますので、もし一口でも口にしてしまったらすぐに動物病院に連れていきましょう。

魚以外の海の幸であるタコ、イカ、カニ、エビ、貝類は中毒の素です。青魚にも中毒の素が含まれていますので、これらの海の幸は新鮮であっても与えないようにしましょう。


観葉植物

思いのほか中毒性が高いのが観葉植物です。シダ類、花類、幸福の木に至るまで、たくさんの植物が毒性を持っています。これは、植物がむやみに動物に食べられてしまわないように進化した護身能力ともいえます。

毛玉を吐こうとしたり、楽しくじゃれているときに植物をかじってしまうことがありますが、嘔吐の原因になることが多いです。嘔吐までいかなくても元気がなくなり、よだれをたらすようになります。

アロエ、アサガオ、小さな葉をたくさんつけるツル性シダ植物、クリスマスシーズンのシクラメンやポインセチアなどは、嘔吐やよだれの原因となります。

ねぎ中毒と同様、毒性には個体差がありますので、「少ししか食べていない」は、中毒を否定する理由にはなりません。かじった跡があって元気がないと感じたら、中毒を疑いましょう。すぐに動物病院に連れていく必要がありますが、家にある植物の名前をしっかり覚えておいて、病院へ伝えるようにしましょう。わからないときはその植物の特徴か、植物そのものを一緒に持っていくのが望ましいです。


飲み薬

薬局で売っている人間の薬は、犬や猫にとっては猛毒なものがあり、よかれと思って与えた薬が命を奪うこともあります。人間の薬はあくまで人間のための薬ですから、犬や猫にとっても「薬」であるとは限りません。どんなによく知っている症状でも、あなたが経験したことのある病気でも、決して人間の薬を与えないようにしましょう。


駆虫剤・除草剤・洗剤

春先に、公園や街路樹の雑草対策に除草剤を撒くことが多くあり、初夏には、害虫対策で駆虫剤を撒きます。犬や猫は、胸やけを解消するためにわざと吐こうとして雑草を食べることがあります。その際、一緒に除草剤を飲み込んでしまい、中毒になることがあります。動物は植物よりも弱い生き物ですので、草を殺せる薬なら犬や猫は死んでしまいます。

また、衣替えや大掃除で、普段は洗わないものを洗うことがあったら、洗剤が溶けている水にも注意しましょう。特に庭やベランダ、網戸や自動車、大きな敷物などを洗剤を使って洗う時には、流した水をペットが舐めてしまわないよう近づけないように対処して、洗剤が溶けている水がなくなるまできれいに水で流しましょう。


蛇・蛙・魚・虫・ゴム

護身のために、体表に毒を持った生き物はたくさんいます。これらの生物をくわえている瞬間を目撃しない限りは、くわえたかどうかを断定することはできませんが、この場合は嘔吐やよだれに加えて、顔が腫れるという特徴的な症状が現れます。顔が腫れていたらすぐに病院に行きましょう。処置が早ければ、症状を軽く治めることができます。生物をくわえて中毒症状が出た場合には、その生物が持っている寄生虫にも同時に感染しているかもしれないので、中毒症状が引いたら便検査もしてもらいましょう。

ゴムやプラスチックの製品をくわえてしまっても顔が腫れることがあるので、症状が出たらすぐに動物病院に連れていくのが無難です。

また、毛虫に刺されたり、葉っぱでかぶれたりすることもあります。この場合の多くは皮膚症状が出ますので、嘔吐や下痢はないかもしれませんが、早く治療してあげたほうがよいことには変わりありません。


豆類・果物

特に犬は、豆で下痢や嘔吐を起こすことが多いので、季節のお豆料理には注意が必要です。お正月の黒豆、節分の豆まき、夏の枝豆やソラマメ、ビールのお供のピスタチオ、茶碗蒸しの銀杏などが挙げられます。また西瓜、柿、みかんなどでも下痢になることが多いです。


おわりに

犬や猫は、何が体に良くて何が悪いのか、どのくらいの量なら良くてどのくらい量なら悪いのかを体で感じることはできません。普段から中毒の原因となるものには近付けないように注意しつつ、中毒の疑いが少しでもある場合は、「このくらいなら平気だろう」と思わず、重症化する前に、すぐに動物病院に連れていきましょう。

ペットクリニック.com

獣医師発信のペット情報サイト